「視力が悪くても歯科衛生士になれる?」
「コンタクトやメガネでも、仕事はやりにくくない?」
「最近、老眼が始まって見えにくい。もう働けないかな?」
歯科衛生士にとって、視力はとても重要な部分です。歯科業務では、歯石を取ったり、カリエスを見つけたりと細かい作業がとても多いですよね。老眼が始まったり、視力が下がってきたりして、歯科衛生士の仕事を続けていけるか不安と感じた事がある人も多いのではないでしょうか?
D.HITでは、現役歯科衛生士の視力について、公式Instagramでアンケートを実施しました!
目が悪いと歯科業務で困る事や、これから拡大鏡を使ってみようと思っている方に選び方をお伝えしていきます。歯科衛生士の視力についての情報はあまりないので、これから歯科衛生士になる方も長く続けていきたい方も、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
歯科衛生士は視力が悪くてもできる?
歯科衛生士法には、
『心身の障害により業務を適切に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの』は免許を与えない事がある
引用 歯科衛生士法第4条の3
と記載されています。でも実は、視力基準など具体的な決まりはありません。運転免許のように定期的な視力の検査などもないので、視力の低下が理由で歯科衛生士の免許がなくなるという事はありません。
しかし、実際の臨床は、目が悪いままだとできません。
歯科衛生士の臨床での仕事は、小さい口腔内での細かい作業になります。歯石を取る時には、スケーラーなど刃物を扱います。それを、目がボヤけている状態でやると想像したら、怖すぎませんか?ただでさえ繊細な口腔内を、しっかり見えていない状態で触る事は非常に危険です。
歯科衛生士を続けていくためには、続けていく上で視力に問題がないかを自分で判断していかなければなりません。
現役歯科衛生士に聞いてみました!
私の周りにも、視力が悪くコンタクトやメガネをしている歯科衛生士はたくさんいますが、視力が良い人と悪い人、実際どれくらいの割合なのでしょうか。
そこで今回、D.HITの公式Instagramで、現役歯科衛生士さんに、視力に関するアンケートを独自で実施しました!
アンケートの結果
447名の現役歯科衛生士さんが回答してくださいました!
- 裸眼(123票) 28%
- 視力良し+拡大鏡(46票) 10%
- コンタクトorメガネ(203票) 45%
- コンタクトorメガネ+拡大鏡(75票) 17 %
視力が良い人は38%、視力が悪い人は62%という結果になりました。視力が悪くても、コンタクトやメガネで歯科業務をしている人は結構多いですね。でも、コンタクトは目の調子が悪い時や、花粉の時期など目のトラブルがある時、痛くて入れられないとか目がゴロゴロするとか、よく聞きます。
拡大鏡を使っている人が多い
拡大鏡を使っている人の割合は、全体の27%という結果に。私の予想ではもっと少なかったのでこれは発見でした。視力が良くても拡大鏡を使っているという人が10%で、意外と多いと感じました。
私は拡大鏡を使っていないのですが、口腔内が狭く見えにくい時はつい姿勢が崩れてしまい、無理な体勢が続くと腰や首が痛くなるので、拡大鏡の必要性を最近感じています。拡大鏡については、のちほどさらに深堀りしていきますね!
視力が悪いと困る歯科衛生士の仕事
私自身、視力は良くて、今まで困った事はなかったのですが、最近は業務が続くとだんだん目が疲れたり、スマホを見過ぎるとピントが合いにくくなったりすることも増えました。実際、視力が悪いと歯科業務で何が困るのか、周りの歯科衛生士さんからも話を聞いたので、お話ししていきますね。
歯石やカリエスの見逃し
小さいカリエスや隣接面の歯石は目が良くても見えにくい事もありますが、ある程度大きい物まで見つけれず残してしまうと、院長からの信頼がなくなっていきます。二重チェックに時間もかかりますし、患者さんからしても「なんかこの衛生士さんにメンテナンスしてもらってもスッキリしないな」と担当者を変えて欲しいという事態になりかねません。
バーやファイルを直す時の入れ間違い
バーにはとても似ている物が多いですが、元の位置に戻さないと次の治療で使う時に困ってしまいます。ファイルも色、サイズ、種類と分かれていますが、気をつけて見ないと入れ間違えることが多いです。中には高価な器具もある為、同じ場所に直さないと紛失するリスクも上がります。
パノラマでの問題の見落とし
パノラマでは、親知らずや欠損歯の確認、根の状態、骨吸収の状態など口腔内だけではわからない事を定期的に確認していきます。先生ももちろん確認しますが、衛生士もメンテナンス中に患者さんに説明したり、チェックして何か気になるところがあれば先生に報告しなければいけないので、見落としが多いと困ります。
薄い着色汚れを見落とす
メンテナンスに来られる患者さんの中には、着色除去メインで来られる方も多いです。濃い着色は見えやすいですが、薄い着色や小児の着色、隣接面の着色は見えにくいことも多いです。患者さんは自身の状態をよく見ていますので、見落としがあると「とれていない」とクレームになりかねません。
プローブのメモリが見えない
私が普段務めている歯科では、Hu-Friedy社のWHOプローブというものを使用しています。3.3.2.3ミリの間隔で目盛りがついていて、黒のマークで色分けされているので見えやすいですが、それでもミリ単位の世界なので、目がぼやけてはっきり見えないと非常に困ります。医院によって使っている器具は様々で、プローブの種類によっては、目盛りに色分けされてない種類もあります。前に助っ人で入った医院のプローブは、目盛りの間隔も違うし黒の色分けマークもなく、光の反射で見えにくくて苦労しました。慣れていないプローブはやりにくく、時間内に終わるかヒヤヒヤした経験があります。
老眼が始まったらどうする?
元々視力が良くても、40代後半くらいから老眼が始まります。今まで視力がよかった人でも必ず訪れるため、歯科衛生士を続けるなら対策を打つ必要があります。
老眼が始まった歯科衛生士さんたちは、どのように対策しているのでしょうか。周りの衛生士さんに聞いた話をもとに、対策方法をまとめました。
もともとメガネをかけている人の場合
- メガネを外す
- 必要な時だけ老眼鏡に付け替える
- 遠近両用メガネをかける
近視用のメガネを使用している人の場合、老眼の初期段階であれば、近くを見たい時だけメガネを外すことで、見えやすくなります。
メガネを外しても近くが見えにくくなってきたら、必要な時だけ老眼鏡に替えるなど、シーンによってメガネを使い分ける必要があります。
遠近両用のメガネに換える方法もあります。遠近両用メガネは、レンズの上部分と下部分で良く見えるところが違うレンズが入っていて、視線を上下に動かすことで、遠くも近くも見ることができます。一つで賄える点では付け替えなくて良いので楽ですが、慣れるまで時間がかかるのと、微妙に視力もピッタリ合わない場合もあり、個人差があるようです。
コンタクトレンズの人の場合
近視用のコンタクトレンズを使用している人が老眼になると、遠くは見えますが近くが見えづらくなります。
- コンタクトレンズの遠くを見るための度数を弱める
- コンタクトレンズをしたまま老眼鏡をかける
- 遠近両用のコンタクトレンズにする
老眼の初期段階では、コンタクトレンズの度数を弱めることで解決する場合があります。遠くは見えにくくなりますが、その分近くが見えやすくなるイメージです。遠くを鮮明に見る必要がない人には有効です。
車を運転する人は度数を弱めることが難しいので、老眼鏡を併用して対処しましょう。
コンタクトレンズにも遠近両用がありますが、メガネと同じで慣れるまで時間がかかったり、人によっては合わない場合もあったりするので、これですべての人が解決!というわけではなさそうです。
もともと視力が良い人の場合
視力の良い人が老眼になると、もともと視力が悪い人に比べ、今まで使ってこなかったメガネやコンタクトをいきなり使うことになるので、なかなか慣れなくて不便に感じる人も多いです。
老眼は急に見えなくなるわけではないので、「多少見えにくいけど、まだいけるだろう」と対策せずそのまま裸眼で仕事をしている、という歯科衛生士さんも多いです。メガネもコンタクトも、慣れていない方は疲れてしまうため、付けたくない、とそのままにしてしまうようです。
でも実際は、だんだん見えなくなっていきます。私が以前、一緒に働いていた衛生士さんも、老眼が進むにつれてカリエスや歯石の取り残しが目立ってきて、院長に注意されてしまっていました。これでは歯科衛生士としての信頼を失ってしまい今後の仕事に影響するので、やはり早めに対策することをおすすめします。
口腔内を見る時は裸眼に拡大鏡、文字などを見る時は老眼鏡に替えるなど、必要なシーンでの拡大鏡と老眼鏡の使い分けが良さそうです。
拡大鏡について
アンケートの結果を見ると、視力の良し悪しにかかわらず拡大鏡を使用している人は増えていると感じます。私も最近拡大鏡の必要性を感じる機会が増え、導入を検討しているので、種類や選び方を調査してまとめました。迷っている方の参考になれば嬉しいです!
拡大鏡は使うべき?
視力が良くても、歯科衛生士は拡大鏡を使うべきでしょうか?
結論から言うと、拡大鏡は「なくても仕事はできるが、見える世界が変わる」ものです!
- 拡大して見るのでカリエスや歯石も細かいところまで見えやすく、見落としが減る
- 作業がスムーズになって能率アップになる
- 拡大鏡の視点を合わせるのに距離がいるため、姿勢が良くなる
- 早めに拡大鏡に慣れておくことで、老眼になった時に楽
などなど、とてもメリットは多いです。ただ、使いこなせるまでに時間がかかる事は懸念されます。
- 軽量タイプもあるが、レンズがあるので重い
- 物によっては高額(良いものは高い!)
- 倍率が高くなると、視野が狭くなる
などデメリットもありますが、これさえクリアできれば、やはり使ったほうが歯科衛生士として確実なスキルアップになります!
拡大鏡の種類
歯科衛生士が使う拡大鏡は「歯科用ルーペ」とも言います。初めて使う人でも挑戦しやすい比較的安価な物から、オーダーメイドや高倍率になると高額なものまで様々です。自身で購入する場合もありますが、歯科医院によっては拡大鏡を支給しているところもあります。ホームページや求人情報にも「ルーペ支給」と記載されていたりするので、チェックしてみてくださいね。
ルーペにはTTLタイプとフリップアップタイプの2種類があります。
TTLタイプは、レンズがアイグラスに埋め込まれているタイプです。レンズと目の距離が近くなるので視野が広くなり、調整装置もない分、軽量でクリア感があります。しかし、レンズが固定されているため、瞳孔間距離の調整は自由にできません。
フリップアップタイプは、アイグラスに跳ね上げ式のレンズが別で付いているタイプです。レンズを上げ下げできるので、ルーペを使用しない時でもいちいちゴーグルを外す手間がなく便利です。さらにアイグラスが外せるタイプなら、メガネの上からでも装着できます。瞳孔間距離を調整できるため、複数人でシェアもできます。
拡大鏡(歯科用ルーペ)の選び方
歯科用ルーペはいろんなメーカーから出ていますし、たくさん種類があるので迷いますよね。購入する前に、ある程度自分の好みは考えておいた方が良いと思います。例えば、「メガネをかけると疲れやすいから、とにかく軽いのが良い!」とか、「メガネの上からも使いたい」などです。歯科用ルーペを選ぶポイントを7つご紹介します。
- 価格
- 倍率
- 重さ
- 作業距離
- ライトが付いているか
- 瞳孔間距離
- 焦点深度
価格
いきなり高い金額のものを買うのは、勇気が入りますよね。やはり良いものは高いのですが、値段だけで選ぶと、重かったりして自分には全然合わないという可能性もあります。まずは安価なものから挑戦してみるのも良いと思います。低倍率だと1万〜3万くらいの物が多いです。
倍率
倍率は、選ぶ上でとても重要なポイントです。治療内容によって、必要な倍率は変わります。精密な治療ほど高倍率になりますが、倍率が高くなると焦点距離や作業距離が短くなり、視野も狭くなるというデメリットもあります。一般の衛生士業務では、2.5〜3.5を選ぶ事が多いです。初めて使う場合、まずは低い倍率から始めるのがおすすめです。
重さ
長時間使う物なので、重いと疲れやすくストレスの原因にもなります。高倍率で多機能の物は、どうしても重くなります。物によってつけ心地も様々で、重すぎると安定しないなどもあるので、試適は必要ですね。
作業距離
ルーペから治療部位までの距離です。座位と立位で適した距離が異なり、短すぎると腰と首に負担がかかってしまいます。快適な姿勢で治療をするため、頭の位置を確認しデモ機などを使ってみながら自分に合った作業距離を把握することが重要です。
ライトがついてるか(後付け可能か?)
ルーペ越しで見える部分は、倍率が高くなるほど、肉眼よりも暗くなります。ライトがついてるほうが明るいですが、その分重くもなります。ある程度重さに慣れてから、ライトを後付けするというのも良いかもしれません。
瞳孔間距離
瞳孔間距離(PD)とは、右目の瞳孔(黒目の中心)から左目の瞳孔(黒目の中心)までを示す言葉です。人によって目の距離は違いますので、自分に合ったものを選びましょう。瞳孔間距離を調整できるタイプなら、スタッフ同士で共有して使用することも検討できます。私の職場の院長は、市販のものでは全然サイズが合わず、オーダーメイドにしたそうです。(高額!!)でも、自分だけに合わせたオーダーメイドのルーペなんて、憧れます!
焦点深度
焦点深度とは、ルーペを通して術野を見たとき、ピントが合っている範囲(奥行き)のことを指します。焦点深度が深いと目が疲れにくくなるので、長時間の使用にも適しています。倍率を選ぶときは、焦点深度も忘れずに考慮しましょう。
実際にショールームに行って拡大鏡を試してきた!
勤め先の院長の勧めで、新大阪にあるCiショールームに行ってきました!
ショールームへ行くと、スタッフの方がだいたいの希望を聞いてくれて、おすすめを教えてくれます。ルーペからマイクロスコープと、いろいろ試すことができます。
今回私は、のちに買い替える可能性も考慮し、比較的安価な2万円台のガリレアン式ゴーグルのTTLタイプを試しました。瞳孔間距離が合わないと視点がずれて見えないので、52cm〜62cmの中で、自分に合うものを選びます。私の希望の金額で、ゴーグルで2.5倍率のものは2種類のみでした。あとは装着してみてずれないか確認し、レンズの大きさも違ったので、顎模型をお借りして、いつもメンテナンスをしている体勢で、好みの方を決めました。
ネットから注文もできますが、サイズが合わないと視点が合わないので、やはり試着は必要だと思います。直接ショールームに行って試適するのが1番ですが、時間が取れない方や近くにショールームがない人は、ネットで試適用の貸し出しもあるようです。いろいろ試して、自分にぴったりの拡大鏡を見つけましょう!
目を疲れさせないコツ
一日中メンテナンスをしていたりパソコンで在宅ワークをしていたり、近距離の同じ所ばかり長時間見ていると、筋肉が緊張した状態が続き、ボヤけたり疲れ目になったりします。アンケートでもコンタクトやメガネを使用している方は多かったので、余計疲れやすく大変ですよね。
私も最近、SRPなどしばらく同じところを見てたり、プライベートでもスマホを長時間見てしまったりした時、他にピントを合わせるのに時間がかかることが増えてきました。
体のケアをするように、目のケアをするのがおすすめです。
- 定期的に遠くを見たりして筋肉を緩ませて、目を休ませる
- 蒸しタオルなどで目を温める
- コンタクトやメガネの度が合っているか定期的に確認する
- 老眼が始まったら放置せず、老眼鏡を使う
- ピント調整機能改善成分が入った目薬をさす
- 目の体操をする
- 目の乾燥を防ぐ
私だけかもしれませんが、ついSCの時やパソコン業務など夢中になると、瞬きするのを忘れませんか?忘れず瞬きしましょう(笑)
まとめ
臨床の歯科衛生士は、目を酷使する仕事です。以前は、「いつか視力に限界が来た時はやめ時だな」と思っていました。
でも、視力が悪くても、コンタクトやメガネがあれば歯科衛生士の仕事はできますし、老眼が始まっても対策をすれば、問題なく続けることができます。歯科衛生士は、実は長く働ける職業なんです。
大事なのは、視力が低下した時に放置しないこと!最近調子が悪いなと思う時は、早めに眼科へ行き、しっかり見える状態で仕事をしていきたいですね。そして、拡大鏡を使うことで視力もよりパワーアップできるので、ぜひ活用して歯科衛生士としてのスキルを磨いていきましょう!