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なぜ歯科衛生士に「派遣」が少ないのか?3つの理由を徹底解説

歯科衛生士の雇用形態というと、ほとんどの方が「正社員」や「パートタイム」での勤務を思い浮かべると思いますが、「派遣社員」はあまり聞いたことがありません。

歯科衛生士の勤務実態調査(公益社団法人 日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査報告書 令和2年3月)で、任期付き等の常勤勤務の歯科衛生士は3.9%というデータがあります。期限付きのパートなども含まれているため、派遣社員はさらに少ないと言えるでしょう。

派遣なら、短期間ごとにいろんな歯科医院を経験できそうなのに、なぜこんなにも少ないのか?その背景を調べてみました!

Rinne
D.HIT編集部 Rinne
4つの歯科医院を経験し、自分は臨床に向いていないと歯科衛生士を諦めていた時にD.HITに出会う。もう一度歯科衛生士として働くことと、密かに憧れていた在宅ワーカーになりたいという夢を同時に叶えるために受講を始めたキャリココ生。

歯科衛生士は派遣に向いていない?

なぜ派遣の歯科衛生士はいないのか。派遣という雇用形態の特徴や、歯科医院側の事情などに注目して見てみると、正社員やパートと比較してデメリットが多く、「派遣という働き方自体が歯科衛生士には向いていないのかもしれない」ということがわかりました。

特に大きなデメリットはこちら。

派遣の歯科衛生士のデメリット
  1. 派遣は働き方の制限が多い
  2. ボーナスや資格支援が出ないことがほとんど
  3. 歯科医院側のリスクが多い

派遣としての働き方は限られている

そもそも、派遣とはどういう雇用形態なのでしょうか。一般的な歯科医院での正社員やパートタイムの「直接雇用」と比較して見ていきましょう。

  直接雇用 派遣
労働契約を結ぶ先 歯科医院 派遣会社
給与の支払い 歯科医院 派遣会社
保険の手続き 歯科医院 派遣会社
勤務先 歯科医院 派遣先の歯科医院
仕事上の指揮命令 歯科医院 派遣先の歯科医院
有休を支給するのは 歯科医院 派遣会社
休業手当の支払い 歯科医院 派遣会社

(参考:厚生労働省|労働者派遣事業について 派遣で働くときに特に知っておきたいこと

労働契約から、全ての手続きが歯科医院のみで完結する直接雇用とは違い、派遣は派遣会社と労働契約し、実際の仕事上の指揮命令以外はすべて派遣会社が請け負うことになります。

派遣会社と派遣先(歯科医院)の双方が守らなければならないルールは「労働者派遣法」で細かく決められています。

その中に、「派遣が利用できない業務」という記載があります。

港湾、建設、警備、医療関連業務、弁護士・社会保険労務士などのいわゆる「士」業については、派遣法の適用範囲から除かれ派遣が禁止されています。

(引用:厚生労働省|しくみと法律 派遣が利用できない業務

「士」とつく職業は派遣が禁止、と書かれています。

士業は、「資格を持っている個人が依頼人から委託された業務を行う職業」であり、労働者として他の人から指揮命令を受けることがありません。ですが、派遣は「派遣先の企業」から指揮命令を受けることになります。そこが士業の業務と沿わないため、派遣の形態に適していないということで、禁止とされています。

そして、歯科衛生士はこの「士業」に含まれるため、派遣として働くことができないのです。

法律で禁止されているんじゃ、そもそも派遣の歯科衛生士なんて存在しないじゃないか!
…と思われるかもしれませんが、実は例外があります。

上記で禁止とされている医療関連業務の中でも、以下の条件を満たしていれば派遣として働くことができます。

ただし、以下の場合は可能である。

  • 紹介予定派遣
  • 病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われるものを含む)以外の施設(社会福祉施設等)で行われる業務
  • 産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
  • 就業の場所がへき地・離島の病院、社会福祉施設等および地域医療の確保のため都道府県(医療対策協議会)が必要と認めた病院等における医師、看護師、准看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師の業務

(引用:日本人材派遣協会|病院・診療所などにおける医療関連業務

簡単にまとめると
  • 紹介予定派遣
  • 社会福祉施設などでの勤務
  • 産休育休等、長期休業中のスタッフの代わりの勤務
  • 離島やへき地などでの勤務

この4つのどれかなら、例外的に派遣社員として働くことができる、ということですね。歯科衛生士で言うと、「紹介予定派遣」か「休業中のスタッフの代替」なら始めやすそうです。

紹介予定派遣とは、派遣終了後もその歯科医院で働く予定の派遣のことです。

紹介予定派遣とは…
  • 派遣期間終了後に派遣先の医院の正社員や契約社員などになる(直接雇用される)ことを前提とした派遣
  • 派遣期間は最長6か月(派遣会社と医院で決める)
  • 派遣期間終了後に検討し、医院と派遣社員がお互いにこのまま勤務したい(雇いたい)となれば医院と直接契約し、医院の正社員等になれる

通常の派遣と違い、直接雇用が前提のため、医院側はこれから派遣されてくる人物の履歴書を見ることができ、事前に面接を行うことができます。派遣期間中に、その後も医院で働く気があるのかを確認し、合意が得られている場合は、派遣期間終了後の契約内容を相談して、事前に採用内定を出すこともできます。

紹介予定派遣は歯科衛生士にとってどうなの?

紹介予定派遣であれば、派遣として歯科医院の雰囲気を知ってから直接雇用に移ることができるので、いろんな医院を経験しながら自分に合った歯科医院を探すことができそうですよね。

ですが、「期間が決められている」というのはデメリットでもあります。派遣期間中はその医院で働くことが派遣会社と歯科医院の取り決めで決められているため、期間の途中でやめる事はできません。もし「この医院は自分には合っていない」と早くに気づいたとしても、派遣期間が終わるまで(最長6ヶ月間)は働かなくてはならないのです。そのため、自分に合わない医院に派遣されてしまった場合は、つらい環境になってしまうかもしれません。

派遣期間が終了したらそのまま直接雇用で働いてくれるという認識が強い医院もあり、直接雇用を断った場合、トラブルになる可能性もあります。断ることは契約違反ではないのですが、あくまでも「直接雇用が前提」なので、あまりたくさんの医院を断ってしまうと信用を失ってしまうかもしれません。

また、1つの医院で最長半年間は動けないとなると、いろんな医院を経験したいと思ってもなかなかに長い時間がかかってしまい、効率的とは言えないのではないでしょうか。

その上、紹介予定派遣は「直接雇用」を前提とした派遣ですが、直接雇用には、

  • 正社員
  • 短時間正社員
  • 契約社員
  • 嘱託社員
  • パートタイム・アルバイト
  • 業務委託契約

と種類があります。派遣終了後の雇用形態は特に決められていないので、正社員を希望したとしても、契約社員などの雇用を提示される場合もあります。

また、派遣期間中の労働時間や賃金は派遣会社と医院との契約で決まっているため、医院と直接雇用に切り替わった際に、契約条件が変わる可能性も高いです。直接雇用になる際は、契約内容をしっかりと確認する事が大切です。

賞与(ボーナス)や資格支援が出ないことがほとんど

派遣社員は派遣会社の所属になるため、賞与が出るとしたら派遣会社からです。しかし、ボーナスを支給している派遣会社はほとんどありません

そもそも賞与の支給は法律で義務付けられているものではなく、労働契約書や就業規則に賞与の有無を「無」と明記していれば、企業側は賞与を支給しなくても問題ないのです。

賞与を支給するメリットとしては、従業員のモチベーションアップにつながる、業績に合わせて人件費を調整できるなどがあります。ですが派遣の場合は、派遣会社と勤務先の企業との間の契約で基本給が決められており、基本給の中にあらかじめ賞与や交通費等が含まれていることが多いうえ、基本的には期間限定の働き方なので、企業側が賞与を支給するメリットがないのです。

そのため、派遣社員でいる限り賞与は貰えないものと思った方が良いでしょう。

賞与はないのか…と諦めてしまうかもしれませんが、紹介予定派遣であれば、派遣から直接雇用に切り替えた際に医院の賞与支給の条件を満たしていた場合は、早めに賞与が出る可能性があります。賞与支給の条件は医院によって異なるため、直接雇用に切り替わる際によく確認しておくことが大切です。

また、派遣社員の福利厚生は派遣会社のものが適応されるため、派遣先の医院の福利厚生を受ける事はできません。ですので、院内懇談会や社員旅行、特別休暇などは参加できなかったり、別途費用がかかることがあります。

さらに、短期間しかいないことや、その後も医院で働いてくれる確証もないため、資格やセミナーの支援等を出してくれる医院はほぼないでしょう。派遣期間中のスキルアップは自分で行わなければなりません。

歯科医院側のデメリットも多い

歯科医院側は「派遣」に対してどう思っているのでしょうか。

歯科医院側からみた派遣
  • コストが高い
  • 最長でも6か月勤務と短い
  • 派遣終了後、直接雇用になるとは限らない
  • 派遣に対して良いイメージがあまりない

このようにデメリットが多いため、あまり派遣を使いたくないと考える医院は多いかもしれません。

特に大きなデメリットは、やはりコストがかかることでしょう。

派遣会社を経由して派遣社員を紹介してもらっている、という形になるため、派遣社員に支払う給与分にプラスして、派遣会社への紹介料(マージン)を支払う必要があります。医院が支払う金額のうち、7割が派遣社員の給与、3割が派遣会社のマージン(一般社団法人日本人材派遣協会|派遣社員の賃金と派遣料金)だと言われています。

そのため、パートタイム等よりも時給の高い派遣社員への給与に加えて、派遣会社への費用も追加で支払っていることになります。

派遣を使う理由が、既存のスタッフが休みの間の一時的な「つなぎ」の場合は、期限を決める事ができるので便利ですが、紹介予定派遣となると、直接雇用になってくれる人が来てくれるまで繰り返すこととなるため、直接求人をかけるより多額の資金がかかります。

ちなみに派遣社員側からすると、自分のお給料はわかるけど、実際に医院が支払っている総額ってわからないことが多いんです。そのため、正社員と派遣社員との間でどちらの給与が多い・少ないで揉める、なんてことも

派遣を雇うということは便利な反面トラブルにも繋がりやすく、医院側も避けている傾向がありそうです。

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フリーランスという選択肢

派遣って、意外と制約が多くて自由に働けないんだな、と思われたかもしれません。

  • いろんな医院を経験できる
  • 時給が高い

という派遣のメリットと同じ条件で、もっと自由に働ける働き方があります。

それが、フリーランスの歯科衛生士です。

派遣とフリーランスとではどのような違いがあるのかを見ていきましょう。

フリーランス歯科衛生士
  • 複数の医院と雇用契約を結ぶ場合が多い
  • 勤務時間・場所・時給など自分で決めて提示できる
  • 営業次第で収入を増やせる
  • 複数の働き方を組み合わせられる
  • 在宅・ノマドワーカーになれる
  • 健康保険・年金の支払いや確定申告は自分で行う
  • 契約終了等で収入が不安定になることも

派遣会社との制約がある派遣とは違い、何をするにも自分で決めて自分で処理をするのがフリーランス。働く時間、場所、やり方、収入、すべて自分で決めて自分で調整できるのが最大の強みです。

自由にできる反面、責任も増えます。通常は会社が担ってくれる税金や健康保険、年金等の手続きも自分で行う必要がありますし、個人事業主となるので、賞与や有休はない上、労働基準法対象外のため休日や労働時間の制約もありません。収入を増やしたいからといって働きすぎてしまい、体調を崩す…なんてことにならないためにも、自分管理も重要です。

でも、近年この働き方を選択する歯科衛生士が増えているんです。

「臨床で働く歯科衛生士」というのは同じでも、派遣期間が決められている派遣社員より、いろんな医院を経験することができます。フリーランスなら、もっと自由に働くことができるんです!

フリーランスの歯科衛生士の働き方は多様で、

  • 助っ人(スポット)
  • セミナー講師
  • 歯科医院のコンサルティング
  • 歯科衛生士の教育講師
  • 採用支援
  • SNS運用代行
  • サロン開業
  • 歯科関連のライター

など、自分に合った働き方を選ぶことができます。

臨床もやりたいから助っ人として働きつつ、空いている時間で採用支援をするなど、複数の働き方をすることも可能です!

また、歯科医院に勤めるだけでなく、在宅でも働けるのがフリーランスの歯科衛生士。子育て中でまとまった勤務時間を確保するのが難しい方や、歯科衛生士になったけど臨床に向いていないかもしれない…と思っている方でも、在宅ワークを中心にすることで、歯科衛生士として引き続き働いていくことができます。

フリーランスの歯科衛生士の働き方について詳しく知りたい方はこちら

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まとめ

 派遣の歯科衛生士があまりいないのは、歯科衛生士側も歯科医院側もデメリットが多く、歯科衛生士の働き方が派遣にあまり向いていないことが原因ということがわかりました。

歯科衛生士の働き方としては、正社員の他にも、今回取り上げた派遣、パートタイムやアルバイト、そしてフリーランスなど、多岐にわたります。その中でも、自由な働き方として近年注目されている、フリーランス。確定申告など自分でやらなければいけない手間もありますが、スケジュールを自分で調整できることで、今までできなかったことや、時間がないからと諦めてしまっていたことも、できるようになるかもしれません。もっと自由な場所で自由に働きたい!という方は、ぜひ検討してみてくださいね。

この機会に、自分の働き方について今一度考えてみてはいかがでしょうか。