「フリーランスの歯科衛生士ってどんなことをすればいいの?」
「どんなことを提供すれば、フリーランス歯科衛生士になれるの?」
「フリーランスとしての価値って何?何を提供すればいいの?」
現在フリーランスとして活動している歯科衛生士の方も、これからフリーランスになりたいと考えている歯科衛生士の方も、一度は直面した問い。
その疑問に対する答えは、決して一言では語れません。しかし、その答えを探る中で、重要な考え方があります。それは、「人は価値を提供して報酬(給与)を受け取っている」というとてもシンプルな事実です。
「フリーランス歯科衛生士として価値を提供しなければならない!」と考えてしまうと、とても大きな何かを達成することと捉えてしまいますが、どんなことでも価値の提供は、意外とシンプルなのかもしれません。今回は、フリーランス歯科衛生士として、どのような価値を提供すればいいのか、またどのように価値を見出していけばいいか、そのプロセスまで解説していきます。
「価値」とは、相手が求めている解決策を提供すること
フリーランス歯科衛生士としての価値を考える前に、まずは「価値」という本質的なメカニズムを考えてみましょう。
私たちが、仕事して報酬(給与)を得ることができるのは、「何かしらの価値を提供しているから」です。イメージしやすいもので言うと、目にみえる製品やサービスが思い浮かびますが、ここで言う「価値」とは、単に目に見える製品やサービスだけでなく「相手が求めている解決策を提供すること」という意味を指します。
美容院を例に見てみましょう。
みなさんは美容院に、どのような目的で行きますか?
- 髪を短くしたい
- 髪の色を変えたい
このような目にみえる効果を期待して行くと思いますが、その奥には、
- 髪が長くなってしまったので整えて、綺麗にみられたい
- 地毛が伸びてきてしまい、髪の色を均一に綺麗にして、今よりも印象を良くしたい
- 美容院に行って、ラグジュアリーな気分を味わいたい
と言った「価値」を期待して、ルンルンした気分で美容院に行くと思います。これは、美容師がカットやカラーをいう技術を提供することで、顧客が求めている問題点を解決することにお金を支払っているのです。
クリニックで勤務している歯科衛生士にも、同じことが言えます。クリニックで勤務している歯科衛生士の場合は、歯科衛生士として患者さんの歯をクリーニングすることです。皆さんは、そのクリーニングそのものが「価値」だと思うかもしれませんが、価値を提供するいうことは単にスキルを使うだけではありません。患者さんにとって本当に「価値」があるのは、クリーニングそのものではなく、その結果として得られる「口腔の健康」や「自信を持てる笑顔」です。
患者さんに「価値」を提供できる歯科衛生士に対して、院長は報酬(給与)を支払っているのです。
このように、「価値」は常に「相手の持っている悩みや問題を解決すること」を通じて生まれます。そしてその解決策がどれほど相手に響くかによって、あなたが得る報酬(給与)が決定します。
フリーランスとしての「価値」その答えは経験の中にある
ではフリーランス歯科衛生士としての「価値」とは、何を指すのでしょうか?
私にどんな「価値」があるの?
- 私は、普通にクリニックで歯科衛生士しかしてこなかった…
- 何件もクリニックに勤めて、長続きしてないな…
- 矯正専門医でしか働いたことがなくて、一般歯科はもう忘れちゃった…
- 私に提供できる価値なんてありません…
自分が考える価値 vs 相手が感じる価値
多くの人は、これだっ!と思う自分の強みやスキルの魅力を一生懸命アピールします。しかし、それが相手に響かないと感じたことはありませんか?それは、価値の定義が自分本位になっているからかもしれません。
私は臨床の現場で、こんな光景をよく目にします。
それはTBIの時。相手のモチベーションが低く、ブラッシングの必要性を感じていない患者さんの場合、歯科衛生士があれやこれやと様々なブラッシング方法を提示しても、あまり興味を示してくれません。歯科衛生士としては、口腔環境改善のためにTBIを行いますが、相手にとってそのブラッシングをする価値がないわけです。このような患者さんの場合は、
- このままの状態が長く続くと歯周病になる可能性がありますよ〜
- 今は動揺もないのでよいですが、将来的に骨吸収が考えられますよ〜
と、現在未来の問題点をやんわり伝えて自分の問題として把握してもらうように伝達すると思います。
自分の問題として認識してもらうことで、
と言うフェーズに優先順位を押し上げることができます。
価値は相手の視点から見て初めて成立します。自分が考える価値ではなく、相手が何を望むのか、相手が感じる価値を考えていくことが必要なんです。
フリーランス歯科衛生士としての価値の具体例
ここからは、実際にフリーランスの歯科衛生士がどのような価値を提供しているのかを具体的に見ていきましょう!
臨床が好きな方や患者さんとコミュニケーションをとるのが好きな方は、
・有給休暇を消化させてあげたい
・産休、育休中で、一時的に補填したい
→という課題に対して、
助っ人歯科衛生士として価値を提供
教えることが好きな方や教えることにやりがいを感じる方は、
・クリニックの自費を伸ばしたい
・ホワイトニングを導入したい
→という課題に対して、
コンサル・教育として価値を提供
在宅で仕事をしたい人は、
・患者さんを集患したいけど、SNS媒体を活用できていない
→という課題に対して、
採用業務・SNS運用代行として価値を提供
ここで紹介したのは、ほんの一部です。フリーランス歯科衛生士がどのような強みを活かしているか、さらに興味のある方は、こちらのブログを見てみてください🎵
あなただけの「価値」の見つけ方
それでは、あなたにしかない、あなただけの「価値」を見つける方法をお伝えします。自分自身の「価値」を見つけるために、まずやらなければならないことは、自己分析をすること。
自己分析と価値?何の関係があるの?と思った方もいるかもしれませんが、この自己分析がとても重要になります。自己分析は、棚卸しとも言われますが、自分の過去を思い返し、自分と向き合うことです。実は、ここが最重要であり、非常に時間がかかるところでもあります。
自己分析をせずに始めてしまうと、
「誰に何をしてあげたいのかわからなくて迷走する…」
「自分らしい活動ができずにモチベーションが続かない…」
と行きたい方向性がぶれてしまい、後から悩んでしまうことも多いと思います。そうならないためにも、自己分析を通してあなたの得意なこと、やりたいことを整理して、自分自身の理解を深めることが必要です。
自己分析の第一歩として、このようなポイントを考えてみましょう。
自分が他人よりも得意とすることや好きなこと。苦にならず自然とできていることや当たり前にやっていること。
経験や実績
歯科衛生士人生を振り返って、過去の成功体験や成果は何があったか?具体的な数字や例を挙げるとしたら、どのような事例があるか?
個性
あなたにしかない特性や視点はあるか?
情熱
時間を忘れてしまうほど熱中してしまうことや、今あなたがやりたいことはどんなことか?
どうでしょうか?
「私には強みなんてありません…!😭」
そう思ったあなた。強みがない人なんていないんです。誰にでも強みは必ずあります。
強みと聞くと、人より得意なことや優れていることを思い浮かべがちですが、それだけが強みではありません。むしろネガティブな部分や経験、悲しい過去も、強みになります。
例えば、過去に勤めていたクリニックで、先輩のご機嫌取りが大変でしんどくて、人間関係に疲弊してしまったからフリーランスになりたい!と言う人がいたとします。一般的に見れば、“人間関係 疲弊”というワードだけが印象に残ってしまい、マイナスイメージが持たれそうですよね。でも…
- 同じような経験をしている歯科衛生士の気持ちがわかる
- 感情の起伏が激しい先輩のご機嫌取りの方法を知っている
- 人間関係に悩んでいるクリニックの解決方法がわかる
考え方次第で、これも強みになるのです。
新卒の歯科衛生士を含めて、今まで生きてきて「何の経験もしていません!」と言う人はなかなかいないと思います。あなたが今まで歩んできた人生、一つ一つの経験すべてが、個人の個性であり強みになります。歯科衛生士人生を振り返って、強みや人よりも知識があること、乗り越えた経験を洗い出してみましょう。
価値を引き出し提供するための5つのプロセス
価値を引き出し、相手に届けるには、ただ情報やスキルを伝えるだけでは不十分です。ここでは、価値を最大化するための5つのプロセスについて解説します。
1. 相手を知る
価値を提供するためには、まず相手のニーズや期待を正確に理解することです。そのためには、次のような質問を自分に問いかけてみましょう。
- 相手はどんな課題や悩みを抱えているのか?
- 相手の目標や成功の定義は何か?
- 相手の価値観や優先事項は何か?
これを深く理解するには、会話や観察、さらにはリサーチが必要不可欠です。フリーランス歯科衛生士が新たなクリニックと仕事を始める際、それぞれの院長が抱える具体的な問題を把握することが成功の鍵となります。あるクリニックでは患者対応の人手不足が課題かもしれないし、別のクリニックでは訪問先での高齢者の口腔ケアが十分でないという問題があるかもしれません。相手の立場に立ち、背景や状況を理解することで、初めて本質的なニーズが見えてきます。
2. 相手の言葉で語る
価値を伝える時には、相手の視点や言葉を用いることが重要です。相手が共感しやすい言葉を使うことで、あなたのメッセージがさらに効果的に伝わります。
例えば、単に「私はホワイトニングが得意です」と言うのではなく、「患者さんのニーズをヒアリングし、事前カウンセリングの段階でホワイトニング後のトラブルを回避できるよう努めます。ホワイトニングの薬剤も、クリニックのニーズに合わせたものをご提案し、患者満足度向上・自費率アップにおいて貢献できます」と具体的に語ると良いでしょう。
このように、相手にとってのメリットを明確に示すことが求められます。特に、相手が「だから?それで?」と思ったときに、その先の回答を具体的に伝えられる準備が必要です。
3. ストーリー性を持たせる
価値を伝える際には、単なる箇条書きではなく、ストーリー性を持たせると効果的です。相手がイメージしやすい形で、自分の強みや経験を説明しましょう。ストーリーにすることで、相手に印象深く、記憶に残りやすくなります。
例えば、自分のスキルがどのように相手の問題解決に貢献するのかを以下のことを意識しながら伝えます。
- なぜそのスキルが役立つのか?
- どのように解決策を考えたのか?
- 実際に解決策を実行した結果はどうだったのか?
さらに、相手の「なぜこれを提案するのか」という疑問に対して、簡潔かつ明確に答えることが大切です。長々と話すのは避け、要点を絞って簡潔に伝えることで、相手の記憶に強く残ります。
4. 実行する
相手のニーズを理解し、解決策を提示したら、次は実行の段階です。このプロセスが、価値を形にし、提供する瞬間となります。
例えば、クリニックでの口腔ケア不足という課題を解決するために、自分のスキルを活かして具体的な行動に移します。ここで必要となってくるのは、前述した1〜3の内容です。実行した結果、相手が抱えていた課題が解消され、期待以上の成果を上げることができれば、あなたの価値は相手に強く認識されるでしょう。
5. フィードバックを受け入れ、改善する
最後に、提供した価値が相手にどのように受け取られたのかを確認し、フィードバックを受け入れることが重要です。一度の提案や実行で全てが完璧になるわけではありません。相手の反応を観察し、次のような質問を自分に問いかけましょう。
- 何が期待と異なっていたのか?
- どの部分を改善すれば良いのか?
これを繰り返すことで、次回はさらに相手に響く価値を提供できるように、レベルアップにつながります。また、友人や同僚、専門家に自分のアピールを練習して見てもらい、改善点を教えてもらうのも有効な手段です。
これらのステップを意識して実行することで、相手にとっての価値を最大限に引き出し、提供できるようになります。このプロセスを繰り返し磨くことで、自分の能力や提案がより多くの人に受け入れられるでしょう。
まとめ
フリーランス歯科衛生士として活動するためには「相手が何を求めているか」を常に意識し、それに応える形で価値を提供することです。その価値が患者さんやクリニック、または社会にとって大きなものとなればなるほど、あなたの存在意義も高まっていきます。
だからこそ、自分の持つ知識や技術を磨き続け、それがどのような形で相手に役立つのかを探り続けてください。フリーランスとしての成功は、あなた自身がどれだけ多様な価値を見つけ出し、提供できるかにかかっています。あなたの価値が誰に刺さり、どのように活かされるか。それは誰にもわかりません。もしかすると、フリーランスの方の中にも、まだ自分の本当の価値に気づいていない人がいるかもしれませんね。