フリーランス歯科衛生士が訪問歯科を任されるようになった話。ひとつの選択肢として、目指す人へ。

「歯科衛生士として歯科医院で働いているけれど、訪問歯科にもチャレンジしてみたい!」

「最近、訪問歯科の需要が高まっているから気になるけれど、実際どんな仕事なの?」

私は歯科医院勤めからフリーランス歯科衛生士になり、訪問歯科をしています。訪問歯科ができると、歯科衛生士としての武器が増えるので、おすすめの職業です。また今後どんどん需要が高まる業界でもあります。

この記事では、歯科衛生士が訪問歯科で何をするのかを解説し、実際のスケジュールなども公開します!訪問歯科のやりがいや魅力などもたっぷりお伝えするので、訪問歯科が気になっている歯科衛生士さんは参考にしてください。

miu
D.HIT編集部 miu
新卒から7年半同じ歯科医院勤務していましたが、自分の人生の可能性を広げたく退職し『フリーランス』に! 現在は、歯科衛生士として訪問歯科メインに複数の歯科医院と契約、また歯科に特化したライターとして歯科関連の会社などで記事を執筆しております。

歯科衛生士が訪問歯科でやること!具体的な役割を解説

訪問歯科における歯科衛生士の役割は、4つあります。

  • 口腔ケアで健康を維持
  • 口腔機能を保つためのリハビリテーション
  • 生活スタイルに合わせた指導
  • 家族や介護スタッフへの指導

訪問歯科は時には、歯科治療よりも口腔ケア・管理が患者さんが日々の生活を維持し、楽しく過ごすために必要です。訪問歯科で歯科衛生士が行う具体的な役割を、詳しく見ていきましょう。

患者さんへの口腔ケアで健康維持

訪問歯科では、口腔ケアを行い患者さんの健康維持につなげます。具体的なケア方法は、以下の通り。

訪問歯科での口腔ケア
  • 歯や歯茎の清掃
  • 義歯の手入れ
  • 舌のケア
  • 唾液腺マッサージ
  • 保湿

口腔内が乾燥していると、痰やプラークが唾液で流れないので、口腔内に残り環境が悪化しします。また誤嚥性肺炎の予防としても、口腔内を清潔かつ潤いを保つことが重要です。そのため口腔内が乾燥しやすい高齢者へは、特に唾液腺マッサージや保湿を入念にしています。

口腔機能低下を予防するためのリハビリテーション

訪問歯科では、口腔機能低下を予防するためのリハビリテーションも重要な役割です。食形態が変わってくると見た目も変わり、食欲が落ちる原因にも。そのため口腔体操や咀嚼トレーニングを通じて、患者さんが自力で食事を楽しめるようサポートします。

訪問歯科で行うリハビリテーション業務
  • 簡単な口腔体操(口を大きく開ける、唇をすぼめる運動など)を提案し、日々の習慣に取り入れてもらう
  • 無理のない範囲で、患者が自宅でできる咀嚼や飲み込みの練習を行う
  • 必要に応じて、医師やリハビリ専門家と連携しながら進める

患者さんに指導していると、横でご家族が「私も予防にやってみよう!」と一緒になってトレーニングを行ってくれることもあります。ご家族もご自身の健康を考え、「歯」や「口」に興味を示してくれると、より嬉しくなりますね!

簡単な体操や生活の負担にならないもの、疲れてしまわないものから始めていくと、リハビリテーションを継続できますよ。

患者さんの生活スタイルに合わせた指導

訪問歯科では、患者さんの生活スタイルや環境に応じたケア・指導が求められます。例えば、患者さんがどのような食事をしているのか、日々の生活リズムに合った歯磨き方法は何か、を把握し患者さんに合った口腔ケアを指導するのです。

生活スタイルに合わせた指導
  • 患者さんのライフスタイルや生活リズムに合ったケア方法の提案
  • 歯磨きが難しい場合は、口腔内を清潔に保つ他の方法(洗口液や保湿ジェルの使用など)の紹介
  • 患者さんの意向を尊重し、本人が無理なく取り組める方法を提案

訪問歯科では、指導1回で完璧を求めるのではなく、患者さんの性格や生活を理解した上で少しずつ実践してもらうようにしています。無理なく続けられるアドバイスができると、長期的に口腔内の健康維持へ繋がりますよ。

患者の家族や介護スタッフなどへの指導

訪問歯科では、患者さんだけでなく、家族や介護スタッフへの指導も大切です。そのため口腔ケアの大切さを理解してもらい、日常的なケアが適切に行えるよう指導していきます。

家族や介護スタッフへの指導例
  • 具体的なケア方法をわかりやすく説明する
  • ケアのタイミングや方法を繰り返し確認し、定期的なフォローアップを行う
  • 口腔ケアの大切さや、正しいケアが患者の健康に与える影響を説明し、意識を高めてもらう

私は口腔の知識がない方に向けて、分かりやすく実践しやすいようなポスターや道具を選んでいます。家族や介護者が日々行うケアが正しく実践されると、患者さんの健康を守れますよ。

訪問歯科の魅力とやりがい

私は訪問歯科をしていて、患者さんから「ありがとう」と言われる瞬間が一番やりがいを感じます。

訪問歯科の魅力は、次の2つ。

  1. 患者さん一人ひとりの生活背景や習慣を理解しながらケアを行い、時間をかけて信頼関係を築けること
  2. 噛む力や飲み込む力の改善、健康状態の向上によって、患者さんがより自立した生活を送れるよう支援できること

訪問歯科は、患者さんの人生に寄り添い、笑顔や健康をサポートするという重要な役割を担います。私は患者さんとの信頼関係を深め、生活の質を向上させることを目標に頑張っていきます。

フリーランス歯科衛生士で訪問歯科をする魅力

私は現在フリーランスで、外来+訪問で週1日、訪問のみで週3日働いています。契約している歯科医院は3件です。私はフリーランス歯科衛生士という働き方が合っていて、毎日楽しく仕事ができています!フリーランス歯科衛生士として活動する魅力は3つです。

患者さんに合わせたケアができる

フリーランスで訪問歯科をする魅力は、患者さんに合わせたケアを自分でアレンジできること。たとえば私は患者さんとお話しする時間を重視して時間を長く取っています。私は、フリーランス契約をする際に、患者さんとの予約時間を自由に決めて良いという契約を選択しているからです。

一方、正社員だと病院の方針や規定に従わなければならず、時間をかけたくてもかけられないということもあります。

時間をとってお話しすると、患者さんとの関係も構築しやすく1度の訪問で信頼や信用を得られます。その後、自分の担当にならなったとしても、歯科医院への信頼や信用に繋がるため、他の患者さんの依頼きやすくなったり、私自身歯科医院からのオファーが増えたりもしていますよ。

より良い方法を取り入れられる

フリーランスで活動していると、色々な方法が知れます。私の場合3件の歯科医院と契約しているので、1カ所で正社員として働いている場合と比べて多くの手法に出会えます。

また他の歯科医院でいいなと思った方法を提案できるのも、フリーランスの良い点。先生方も患者さんにとって良いことは、取り入れていこうという姿勢でお話を聞いてくれますよ。

報酬を自由に決められる

フリーランスは歯科医院との交渉で、報酬を自由に決められます。高い技術や優れたサービスがあれば、強気の交渉も可能です。しかし交渉が苦手な私にとっては、歯科医院ごとの交渉に少し抵抗がありました。

現在の私の報酬は、日本訪問歯科協会の訪問歯科衛生士指導料に従って、295点〜362点を頂いています。もし交渉が不安なら、私の報酬も参考にしてみてください。

在宅への訪問歯科|スケジュールと業務内容

訪問歯科を知らない方も多く、どんな働き方なのか、どんな働き方ができるのか気になりますよね。そこで私が実際対応した業務の一部を紹介します。

  • 訪問日のスケジュール
  • 訪問歯科での歯科衛生士の業務内容

在宅訪問時のスケジュール

私が行っている在宅訪問の時のとある1日のスケジュールを、ご紹介します。

9:00 出勤
9:00~ 1日のスケジュールを確認・準備を行い、荷物を車に積み込む
9:30~ 医院を出発
10:00~ 1件目のお宅へ
10:45~ 2件目のお宅へ
11:30~ 3件目のお宅へ
12:15~13:00 休憩・この日は、コンビニで昼食
13:15~ 4件目のお宅へ(ご夫婦の口腔ケアのため、長めのアポ時間)
14:30~  5件目のお宅へ
15:15~ 6件目のお宅へ
16:00 本日の訪問終了・医院へ戻る
16:20~17:00 本日の訪問記録の作成・器具などの片付け・補充を行う

この日は、訪問先までの距離が車で10分前後だったため、診療時間が30分、移動時間が15分の1人45分予定のスケジュールで動いていました。スケジュール通りに動けた1日です。

今勤めている歯科医院では、9:00出勤で、朝も早すぎず!17:00退勤で、自分の予定も入れやすい!という神的なスケジュールです。訪問先までの距離によっては、早めの出勤や退勤が遅くなることもあります。

在宅訪問時の業務内容

在宅訪問では個別対応が基本で、一人ひとりの患者の生活環境や身体的状況に応じた柔軟なケアが求められます。

この日4件目に訪問したお宅では、奥さんは座位を保っておくのが難しいため介護ベッドで口腔ケアを行い、旦那さんはリビングルームで椅子に座って口腔ケアを行いました。ケアの詳細をご紹介します。

奥さんの口腔ケア

  • ハンドスケーラーでの除石
  • ハブラシ・歯間ブラシ・フロスにてプラーク除去
  • 歯頸部の虫歯予防のフッ素塗布

奥さんは、椅子に座ることは難しいのですが、介護ベッドであれば、しっかりと背をつけた状態で姿勢を起こせるので、楽な体勢で口腔ケアを受けられています。また、旦那さんに見られているのが恥ずかしいようで、奥さんは自室で口腔ケアを行いました。

口腔ケアの内容は、基本プラーク除去がメインです。ご自身で日々の口腔ケアも行えているので、比較的歯周ポケットも浅く、縁下歯石もない状態です。しかし、歯肉退縮による歯根の露出や補綴のマージン部など、う蝕リスクが高い部分もあるため予防としてフッ素塗布を行っております。

旦那さんの口腔ケア

  • ハブラシ・歯間ブラシ・フロスにてプラーク除去
  • 歯面がザラついているため、エンジンを使い、ブラシにて歯面研磨
  • 口腔機能低下症に対してのリハビリとして、吹き戻しとペコパンダの実践指導
  • リハビリも兼ねてフッ素は洗口タイプで、30秒ほどブクブクうがいを行う

旦那さんは、プラークが多いため、歯面が白濁しザラつきがあります。そのため、機械的歯面研磨を行い、プラークが付着しにくいように仕上げておきました。

口腔機能の低下が見られるため、吹き戻しとペコパンダをしてもらうように指導をしております。リハビリ用カレンダーをお渡しし、毎日やっているかどうか訪問時に確認をしています。う蝕予防のフッ素は、口周りの筋肉を使ってもらいたいので、洗口タイプで行っています。

訪問時の口腔ケアは、患者さんによって変わるので、超音波スケーラーを使用することもありますし、SRPを行うこともあります。基本は、プラークコントロールを行っていくことだと思っています。

施設への訪問歯科|スケジュールと業務内容

施設への訪問歯科では、介護施設や老人ホームなどの施設に入居している高齢者のケアを行います。

在宅訪問との違いについても触れながら、紹介していきます。

施設への訪問歯科のスケジュール

訪問施設1件の場合のスケジュールです。

12:00 出勤・着替え・準備・訪問人数の確認と患者さんの振り分け
12:30 施設へ移動(私の運転で移動)
13:00 施設到着・施設先の訪問記録を記入
13:05~16:00 施設内の患者さんのお部屋を回る
16:00  施設の方への書類を作成・提出し、医院へ帰宅
16:30~17:00 片付け・着替え・退勤

この日は、訪問施設は1件のみのため、出勤時間がお昼からでした。訪問先の施設が施設が2~3件の日は、朝から出勤になります。また、夕食までには終わらせてほしいという施設の方の希望もあるため、夕方には終わることが多いです。

施設への訪問歯科の業務内容

施設には複数の入居者がいるため、1つの施設で複数人の口腔ケアします。

この日は、全部で40人の患者さんを先生2人、歯科衛生士2人で診療や口腔ケアを行いました。私は口腔ケアの担当だったため、8人の口腔ケアを行いました。診察にアシスタントでついて回る日もあります。

在宅訪問との違い
  • 施設での訪問歯科では、患者さんの予定や他業種スタッフの予定もあるため、効率的なスケジュール管理が必要です。お風呂の時間や施設のイベント時間などの把握は必須。介護サービスが重ならないように、事前に施設の方と調整します。
  • 入居者の健康状態や口腔ケアの状況は施設スタッフが把握しているため、日々の口腔ケアの状態だけではなく、患者さんの性格や生活などの把握はしやすい。そのため、初対面でも患者さんとの距離感を掴みやすいです。

施設訪問では、口腔ケアなどの診察後、施設の方との情報共有のための書類を当日作成し、提出をして帰ります。

訪問歯科で歯科衛生士の私が気をつけていること

訪問歯科では、クリニックとは異なる環境での口腔ケアが求められるため、さまざまな面で注意しなければなりません。

患者さんの生活環境に合わせて柔軟な対応を行いながら、歯科衛生士としての質の高いケアを提供するために私が気をつけていることを3つ紹介します!

自己管理

自己管理は患者さんと自分を守るために必要です。私が日々意識している自己管理は次のようなものがあります。

  • 訪問時の手洗い
  • 清潔不潔の区別など感染防止
  • 使用器具の状態チェック
  • 器具の持ち運び時の安全対策

スケジュール管理

訪問歯科ではクリニックとは異なり、交通状況や家庭環境の影響を受けやすいため、スケジュール管理が重要です。

余裕を持った移動時間の確保と訪問時刻の調整で、時間を守れます。時間をしっかり守れれば、患者さんやその家族と信頼を構築しやすいです。場所や距離の把握をしながら予約管理をしていきましょう。

業務記録の報告や共有は確実に

訪問歯科では、訪問先で行ったケアの内容や患者さんの状態を記録し、他職種と共有します。介護士や看護師、ケアマネージャー、医師などの他職種と連携して患者さんのケアを行うのです。また前回の内容が把握できないと、次回の訪問時に歯科医院のスタッフが困ることも。

具体的には、患者さんの口腔内の状態、行った処置、口腔ケア時の使用した器具、使用薬剤、今後のケアの提案などを詳細に記録。また、変化や問題点があれば、すぐに報告していきます。

口腔ケアの進捗や患者さんの口腔機能の変化、食事形態の提案などを他職種と共有できると、患者さんの全体的なケアを円滑に進められますよ。

歯科衛生士が訪問歯科で叶えられること

訪問歯科は、地域医療の一環として患者さんの生活の質の向上に貢献します。また訪問歯科を経験すると、歯科衛生士としてのキャリアアップにも。

歯科衛生士が訪問歯科で叶えられることを詳しく2つ紹介します!

地域医療への貢献

訪問歯科は、地域社会の健康を支える重要な役割を担っています。高齢者や要介護者が自宅や施設で適切な口腔ケアを受けられると、生活の質が大きく向上します。口腔ケアが行き届けば食事が楽しくなるだけでなく、誤嚥性肺炎の予防や全身の健康維持にも貢献できるのです。

訪問歯科では、患者さんが自宅で安心して生活できる環境を整える手助けができるため、社会貢献を強く感じられます。

歯科衛生士としてのキャリアアップ

訪問歯科は歯科衛生士としての武器になり、今後のキャリアアップにも役立ちます!

訪問歯科では、患者さんの自宅環境に合わせた柔軟なケアの提供や、限られた設備での施術、患者やその家族とのコミュニケーション能力などが訪問歯科では求められます。そのため外来診療とは違うスキルを手にできるのです。

さらに訪問歯科に精通すると、今後ますます需要が高まる在宅医療分野での活躍ができますよ。

訪問歯科の歯科衛生士になるためには

私が考える、訪問歯科の歯科衛生士になるために必要なことは、やる気!」

訪問歯科をやるための資格や認定はないので、歯科衛生士の免許がある方なら誰でもなれます。私も何もない普通の歯科衛生士から訪問歯科衛生士なっていきました。

まずは訪問歯科を始めてみること。そして少しずつ訪問歯科に必要な知識や技術を学び、実際の現場で経験を積めば、成長できますよ!

今後私は、口腔ケアの知識よりもリハビリテーションや地域医療の知識を深めたいと考えており、訪問歯科での即戦力として活躍できるスキル磨いていきたいです。

まとめ

歯科衛生士が行う訪問歯科は、患者さんの自宅や施設に出向き、口腔ケアやリハビリテーションなどを行う仕事です。訪問歯科は患者さんとの距離が近く、密にコニュニケーションを取りながら進めていきます。

訪問歯科は外来とは異なり、自己管理やスケジュール管理、綿密な情報共有が欠かせません。私は訪問歯科を経験して、地域医療への貢献と患者さんからの「ありがとう」の言葉から毎日やりがいを感じて働けています。

訪問歯科は特別な資格は必要ありません。やる気さえあれば、誰でも挑戦できる分野です。高齢化が進む現代社会では、訪問歯科の需要が高まっています。歯科衛生士のスキルもアップする訪問歯科、ぜひあなたもチャレンジしてみてください!

miu
D.HIT編集部 miu
新卒から7年半同じ歯科医院勤務していましたが、自分の人生の可能性を広げたく退職し『フリーランス』に! 現在は、歯科衛生士として訪問歯科メインに複数の歯科医院と契約、また歯科に特化したライターとして歯科関連の会社などで記事を執筆しております。