歯科衛生士の仕事って、実は結構、体力勝負。夕方になると肩や腰がバキバキ…なんてことありませんか?
「歯科衛生士の仕事は好きだけど…私の体、このままずっともつのかな」
「いつまで臨床続けられるだろう」
そんな不安を抱えている衛生士さんは、多いです。
口腔内に合わせて無理な姿勢を続けたり、スケーリングで手首を酷使する歯科衛生士にとって、体の痛みは切実な悩みですよね。
「この仕事は、体に負担がかかるのは仕方ない」と諦めないで!少しのコツや道具の工夫で、体への負担は劇的に減らせます。
今回は、臨床を長く元気に続けるための、今すぐできる「負担軽減術」について解説したいと思います!
歯科衛生士が痛めやすいのは首・肩・腰!
慢性的な体の痛みを抱えながら働いている歯科衛生士さん、多いですよね。
- 首・肩
- 腰痛
- 手首
特に、首や肩、腰を痛める方が多いです。
(参照:歯科衛生士の作業姿勢と筋骨格系障害の関連について)
主な原因は、口の中をしっかり見るためについやってしまう、前傾姿勢。口の中の小さな空間に合わせて、自分の体を無理にねじ曲げてしまっているのです。
「開口量が小さい」「巨舌で視野が狭い」「舌圧が強く、口腔内が見にくい」といった患者さん側の事情もありますし、「器具で患者さんを傷つけてはいけない」という緊張感も、要因の1つではないでしょうか。
長時間に渡って特定の部位に負担が集中することで、慢性的な痛みへとつながってしまいます。
今日からできる!歯科衛生士の負担軽減術
少し工夫するだけで、体への負担はグッと減らすことができます。
ポイントは「姿勢の意識」、「手技の確認」、意外と見落としがちな「診療環境」の3つ。すぐに試せる具体的な軽減術をご紹介します!
がんばって覗き込んでない?姿勢を崩さないための臨床テクニック
「臼歯部の舌側、もっとよく見なきゃ!」
そう思うあまり、無意識のうちに背中を丸め、患者さんの口元へ顔を近づけていませんか?実は、この「覗き込み」こそが、前傾姿勢を作り出し、首や腰を痛める最大の原因なんです。

見えにくいからといって体を無理に曲げていると、知らず知らずのうちに疲労が蓄積してしまいます。
「覗き込まない姿勢」をキープするために、ミラー、排唾管、拡大鏡(ルーペ)を最大限活用しましょう!
「直視」にこだわらず、ミラーテクニックを徹底する
「直視」にこだわりたい気持ち、わかります。でもそれが、前傾姿勢の大きな原因になっているかも。
直視しにくい部位にはミラーを活用することは基本中の基本ですが、キャリアを重ねるほど、技術やスピードでカバーできてしまうため、多少無理な姿勢でも「できてしまう」という落とし穴があります。その小さな無理の積み重ねが、体の痛みの正体なんです。
きっと、新人時代は誰もがミラーテクニックの習得に苦労したはずです。
私もそうでしたが、とにかく遠心が見えずらく、ミラーをどう動かしても見えない。ミラーは曇るし口腔内は暗いし…右に動かしたいのにミラーの中では左に動いているように見え、手前に引きたいのに奥に動いているように見え…毎日脳トレみたいで、結局無理やりのぞき込んでいました。
皆さんも、模型を使ったりスタッフの口を借りたりして反復練習をして、ミラーテクニックを身につけてきたのではないでしょうか。
しかし、長年臨床をこなして手技が向上した今、あの頃必死に身につけた基本を忘れ、無意識のうちに「見えないなら少し覗き込む」という自己流の姿勢が癖になってしまっていないでしょうか?
蓄積した体の痛みを感じているなら、それは「基本への立ち返り」のサインかもしれません。
もう一度、新人時代に習得したミラーテクニックの精度を確認し、体が疲れない正しい姿勢を見直してみてください!
排唾管を使用し、左手を自由にする
スケーリング中、水が溜まるのが気になってつい前傾姿勢になってしまっているなら、排唾管を活用しましょう。
排唾管を使用することでバキュームを持っていた左手が自由になるため、ミラー操作もしやすくなりますし、より楽な姿勢でクリーニングを行えるようになります。口唇の排除がスムーズに行えるのも大きなメリットです。
「排唾管を使わないほうがやりやすい」という方もいますが、私が過去見てきた中では、排唾管を使わずにSCしている人はもれなく覗きこんでしまっていて、かなり姿勢が悪くなっている印象でした。きちんとした姿勢を保つためには、とても有効なアイテムです!
拡大鏡(ルーペ)を活用する
「よく見えない」というストレスを一気に解決してくれるのが拡大鏡です。拡大鏡を使うと作業距離が固定されるため、
背筋を伸ばさないとピントが合わなくなる
= 強制的に背筋が伸びる
という大きなメリットがあります。
裸眼だと、上顎臼歯部や細かい歯石を見ようと、ついつい患者さんに顔を近づけて、前かがみになってしまいがち。拡大鏡を使えば、離れた位置からでも術野が鮮明に、明るく大きく見えます。
慣れないうちは視野の狭さに戸惑うかもしれませんが、毎日使い続けることで慣れて快適になっていきます!長く元気に仕事を続けるための自己投資として、おすすめのアイテムです。
頭を前に突き出す動きが減り、首や肩の痛みが劇的にラクになりますよ。
拡大鏡って、自分で買うには結構高いですよね…。
医院の負担で購入してくれるケースもあるので、院長に相談してみましょう!
私の勤める医院では拡大鏡を貸与してくれるので、ありがたく毎日使わせてもらっています。
中には数十万円するような一流メーカーのルーペを貸与してくれる医院もあるので、もし就職・転職活動中なら「拡大鏡の貸与制度があるか」をチェックポイントにするのもアリかもしれません!
なぜか疲れないDHがやっている、手首を痛めない方法
前傾姿勢による首や肩、腰の痛みと合わせて、歯科衛生士によくある職業病が「手首の痛み」。手首が腱鞘炎になると仕事にならないので、死活問題ですよね…。
でも、同じ患者数を診ていても、手首を痛める人と全く疲れない人がいませんか?その違いは、ちょっとした手技のクセにあるかもしれません。
ベテランでも「いつの間にか自己流になっていた」というのはよくある話。一度初心に帰り、基本の手技を見直してみてくださいね。
インスツルメントは指の腹を使ってふんわり握る
無意識の指先の力みは、腱鞘炎の引き金に。基本に立ち返り、指の腹を使ってペンを握るようにふんわりと保持しましょう。
レストを必ず確保し、手首だけのスナップに頼らない
不安定な状態での操作は危険。確実にレストを置き、手首だけを動かすのではなく、前腕全体を使ったストロークを意識することが大切です。
側方圧をかけるときだけ力を入れ、ストローク後はすぐ脱力する
手にずっと力を入れっぱなしにするのはNG。歯石を弾く瞬間だけクッと力を入れ、あとは脱力。メリハリをつけるだけで疲労感が全く違います。
シャープニングを徹底し、切れるインスツルメントを維持する
切れないスケーラーを使っていると、余計な力が必要になり手首や指先を酷使することに。こまめなシャープニングは、時短だけでなく自分の手を守ることにもつながります。
医院の診療環境も見直してみよう
姿勢や手技は意識しているけど、それでもやっぱり痛い!という方は、チェアサイドなど「働く環境」に原因があるかもしれません。毎日仕事をしているチェアサイドを、ちょっと思い出してみてください。
ユニットが古くて高さが合わない
正しい姿勢を維持するには、見やすい位置に「患者さんの高さを合わせる」のが超重要です。
ところが長年使われている古いユニットだと、微調整ができず、ちょうどよい高さに合わせにくいことがあります。
「一番下まで下げても高すぎたり、自分の身長と微妙に合わない」
「ユニットに合わせてイスを高くすると、足の裏がしっかり床につかない」
そんな地味なストレスが、毎日となると深刻な体のダメージに…。
実際に約40%の歯科衛生士が「椅子の高さが合わない」と答えており、自分の体格に合わせた調整ができない環境での診療は、慢性的な肩こりや腰痛に直結してしまいます。
ライトが暗くて見にくく、目に負担がかかる
「もう少し明るければ見えるのに…」と、目を細めて診療していること、ありませんか?古いハロゲンライトや暗いライトでは、口腔内を確認するためにどうしても顔を近づけてしまいがち。
暗い環境での作業は、眼精疲労を引き起こしたり、ピントを合わせようとする無意識の力みから首・肩こりへと繋がったりします。
「見えにくい=姿勢が悪くなる」という悪循環になってしまい、体に負担がかかります。
診療室が狭くて動きにくい、動線が悪い
ユニット間が狭くてカニ歩きで移動、器具を取りに行くのに何度も回り道、窮屈な状態でスケーリング…。日々の診療で「動きにくいな」「やりにくいな」と感じる動線の悪さも、身体に負担をかける原因です。
42%の人が「アシスタントにつくためのスペースが狭い」と答えており、物理的なスペースの余裕がない環境の歯科医院が多いことがわかります。
院長の診療スタイルに合わせて無理な姿勢を強いられている
アシストに入る際は、院長の診療スタイルやポジションが優先。院長が口腔内を見やすい位置に合わせるために、体を大きくよじらないといけないこともあり、歯科衛生士はどうしても不自然な姿勢で長時間耐えることに…。
「痛いけど、少しの間だから我慢しよう」という小さな無理の積み重ねによって、体が悲鳴をあげることになってしまいます。
つまり、十分な広さのメンテナンスルームがあって、チェアは新しい型で、椅子の高さも自由に調節できて、ライトもしっかりとした明るさがあれば、身体への負担は大幅に軽減できるということ!
でもこういった「環境要因」は、歯科衛生士個人の努力ではなかなか解決が難しい問題ですよね。
できれば院長に悩みや現状を打ち明け、「患者さんの安全な診療のためにも」という視点で、古いユニットやランプの交換など、環境改善の相談をしてみるのも一つの手です。
それでも改善が難しく、今の環境で働き続けることで体を壊してしまう不安があるなら、働く環境自体を見直すことも立派な自己防衛です。
体への負担を減らして、歯科衛生士を長く続けよう
「大好きな衛生士の仕事を、これからも長く元気に続けていきたい」
そのためには、患者さんだけでなく、自分自身の体も大切にメンテナンスしてあげることが何より重要です。
歯科衛生士は年齢制限のない国家資格だけど、身体を痛めてしまっては、大好きな仕事でも続けられなくなります。自分らしく長く仕事を続けていけるよう、まずは姿勢から、改めて意識してみましょう!
それでも、どうしても臨床は限界と感じたら…「働く環境」を見直す時なのかも。
設備投資に積極的な医院への転職、時短勤務への切り替え、あるいはこれまでの臨床スキルを活かした「臨床以外の働き方」へシフトするなど、選択肢は一つではありません。体を守りながら自分らしく働き続けるための方法を、一度立ち止まって考えてみませんか。





