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院長先生の“心の壁”を溶かす〜歯科医院コンサルタントとして本当に大切な3つのこと〜

「数字だけ見せても、先生の心は動かない」

歯科医院のコンサルタント業務というと、「売上を伸ばすための分析と戦略」といった“ロジカルな提案”をイメージする方も多いかもしれません。

「コンサル=課題を分析して改善策を提案する人」というイメージは間違っていません。ですが実際の現場で成果につなげるには、“どんな提案をするか”よりも“どんな関係性を築けるか”の方が圧倒的に重要です。

この記事では、院長先生の心の壁を溶かし、懐に入りこむために私が大切にしていることをお伝えしていきます。

みなみ あんず
D.HIT編集部 みなみ あんず
歯科衛生士歴6年目の時に、結婚による引っ越しを機に勤めていた歯科医院を退職。 「家族との時間を諦めたくない」「歯科業界で働く人の笑顔を増やしたい」と思い、フリーランス歯科衛生士に。 現在は臨床時代に培った経験をもとに、歯科衛生士ライターやコンサルタント・動画編集者として在宅メインで活動中。

歯科コンサルに不可欠な“寄り添う姿勢”

コンサルを成功させるには、まず院長先生との関係性を築くこと。そのために、私が大切にしているのは、まず先生の想いに寄り添い、心の距離を縮めることです。

どんなに優れた改善案でも、先生の中にある迷いや不安を無視したままでは、行動に結びつかないからです。

そもそも、課題の根っこには“人”がいて、“感情”があります。

その背景を理解しないまま数字や正論を持ち込んでも、院長先生の心には届きません。歯科医院の現場で本当に必要とされるのは、“分析よりも共感”のスタンスなんです。

実際に私が現場で実践してきた「寄り添い型コンサル」のあり方を、3つの視点からお伝えします。

人として先生に好かれろ!

1つ目のポイントは、まずは先生に“人として好かれること”

コンサルタントとして現場に入るときにまず意識するのは、「信頼される前に成果は出せない」ということです。どんなにロジックが通った提案でも、院長先生の心が開かれていなければ、どこかで空回りしてしまうもの。いくら知識や経験があっても、「この人、なんか苦手だな」と思われてしまったら、その時点で先生の心は閉じてしまいます。

私は、どんな医院に伺うときも、まずは人対人の関係を築くことからスタートします。雑談でも、ちょっとした気遣いでもいい。「この人なら話してもいいかな」と思ってもらえるように、専門家である前に“人として信頼されること”を意識しています。

院長先生は、意外と孤独…

これは私が関わってきたすべての歯科医院で感じていることなんですが、院長先生って、想像以上に孤独です。

スタッフとは上下関係があるため、あまり本音を見せられません。たとえ悩みがあっても、診療中にそんな話はできませんし、愚痴をこぼす相手もいない。さらに、同業者にはライバル意識もあり、簡単に弱音を吐けるわけでもありません。

経営者としての決断はすべて自分。誰かに相談したくても、できないままプレッシャーだけが募っていく…そんな状態の先生を、私はたくさん見てきました。

先生は孤独。だからこそ、コンサルタントである私が「話せる相手」であることが、何よりも大切だと感じています。

雑談できる関係性が、成果への最短ルート

いきなり業務の話を詰めるのではなく、まずは雑談から。家族のこと、趣味、最近見たドラマ、旅行の話…どうでもいい話ができる関係性を目指します。

一見、無駄話に見えるかもしれませんが、実はそこに大きな意味があるんです。

距離が縮まってくると、先生のほうから「ちょっと聞いてほしいんだけどさ…」と、深い相談をしてくださるようになります。その内容こそ、売上や組織運営の“本質的な課題”につながっていることも少なくありません。

「この人には素直な気持ちを話していいんだ」と思ってもらえることが、信頼関係のスタート。それが実は課題解決の“鍵”になるのです。

先生に話してもらえる=好かれる存在であること。

それができて初めて、必要な変化や改善の提案が先生に受け入れられる土壌が整うのです。

ご飯に行くのは“仲良くなるきっかけ”のひとつ

私はよく「ご飯行きましょう」と先生をお誘いするのですが、これには理由があります。診療後の1次会くらいでいいので、一緒にご飯を食べることで、先生の素の部分が垣間見えることがあるんです。ごはんを食べながらだと、医院にいる時よりリラックスして、不思議と先生のほうから「実はさ…」と、こちらが聞いていないことまで話してくださることもあります。

診療中や打ち合わせでは見えない、“本音”がポロッと出てくる瞬間。それを大切にしています。

ちょっと裏話…

ある先生とは、たまたま飲みに行ったのをきっかけに深い話になり、そのまま夜中の3時まで語り合ったこともあります(笑)最初は医院の話が中心だったのですが、だんだんとプライベートな深い話になっていき、「そういえば、あなたはどういう経歴なの?」と、私自身のこともたくさん聞いてくださいました。
コンサルタントとしてではなく、一人の人間として向き合えたことで、ぐっと距離が縮まった実感がありました。

そのご縁は今でも続いていて、もう長くお付き合いのある大切なお客様になっています。最近では「うちの息子が最近ね・・・」なんて、プライベートの相談をされる関係になりました。

もちろん、毎回朝まで飲み明かす必要はありませんが、特にお酒の場って、先生が素直になれる貴重な時間だったりするんです。こうやって人として信頼されることが、結果として仕事に繋がる。 そう信じて関わっています。

“先生の考え”をインプットする

信頼関係が築けてきたら、いよいよ本題である「医院の課題」や「今後どうしていきたいか」といった話に入っていきます。でも信頼関係が築けたと思って、すぐに「この医院の課題はこれですね」とアドバイスするのは、実はとても危険です。というのも、課題の“本質”は、数字や見た目では判断できないことがほとんどだから。

2つ目のポイントは、課題解決に入る前に、先生の考えをインプットすること

表面的な問題の奥には、実は先生自身の価値観や譲れない想いが隠れていることもあります。だからこそ、じっくりと先生の考えを受け止めて、コンサルとして“この先生にとっての正解”を理解することです。

そのためには、“私が話すこと”よりも“先生に話してもらうこと”。私が意識している理想の会話バランスは、「先生9:私1」です!

こちらから一方的にアドバイスをしたり成功事例を語ったりするよりも、まずは先生自身が今何を感じていて、どうしたいと思っているのかを言語化してもらうことが最優先です。

先生の想いを具体的に引き出すには、質問力も必要です。

  • 「どうしてそう思うんですか?」
  • 「その時、どんな気持ちになりました?」
  • 「もし理想の状態があるとしたら、どんな医院ですか?」

こうした質問を丁寧に投げかけていくことで、先生の頭の中にある“言語化しきれていないモヤモヤ”が、少しずつ言葉になって出てきます。

そして実は、そのプロセスこそが課題解決のミソでもあるんです。

話すことで先生自身が考えを整理し、「あ、自分ってこう思ってたんだな」と気づくことができる。それが解決につながっていきます。私たちコンサルタントは、答えを提示するのではなく、「気づきを引き出す存在」であるべきだと考えています。

意見が合わない時こそ、先生の正義を理解し視点を変える!

コンサルをしていると、どうしても先生の考え方に「ん?」と感じる瞬間があります。「その判断は非効率なのでは?」「スタッフの反発を生みそう…」など、こちらの視点から見れば“違和感”に映ることも少なくありません。

でも、そんなときこそ立ち止まって、視点を変えるチャンスです!

コンサルとして経験を積むほど、「これはこうすべき」「この手法がうまくいく」という自分なりの成功パターンが見えてきますが、その考えがどの先生にも当てはまるとは限らない、ということを何度も現場で痛感してきました。

実は、表面的に見えている違いの奥には、“価値観”や“優先順位”の違いが隠れていることが多いんです。

たとえば、私からすれば「もっと良いやり方があるのに」と思っても、先生にとっては必要なこだわりだったりします。たとえば、

  • 売上よりも「地域での信頼」を守りたい
  • スピードよりも「丁寧な対応」にこだわりたい
  • 効率よりも「スタッフの成長」を大事にしたい

──こういった先生の想いがベースにあるとしたら、私たちの正論は、ただの“的外れ”になってしまうかもしれません。先生にとっての「正義」が何かを理解しない限り、こちらの提案は届かないのです。

だから、違和感を感じたときほど私は立ち止まって、「先生のやり方は本当に間違っているのか?」「私は自分の考えを押し付けていないか?」と自分に問いかけます。

「なぜ先生はそう判断したのか?」を深掘りし、その背景を知ろうとすることで、正反対の意見だったのが「なるほど、そういうことだったのか」と共感に変わることも多いです。

結果的に、先生の価値観を尊重しつつ、現実的な落としどころを一緒に見つけることができれば、それが最善の解決策

意見の違いは、ぶつかるためではなく、理解を深めるきっかけだと思っています。

相手を傷つけずにアドバイスする技術

信頼関係ができて、先生の考え方も理解できた。いよいよこちらから「アドバイスを伝える番」です。──でも実はここが、一番繊細なコミュニケーション力を問われる場面。

どれだけ相手のためを思ってのアドバイスでも、伝え方を間違えると、それだけで信頼関係が崩れてしまうこともあるのです。特に、プライドを持って医院を経営している院長先生にとっては、助言が“否定”や“攻撃”のように感じられてしまうこともあるんです。だから私は、伝える内容以上に「伝え方」に神経を使っています。

3つめのポイントは、相手を傷付けずにアドバイスすること。私が現場で実践している“傷つけずに届くアドバイス”の工夫をご紹介します。

ストレートな“正論”は逆効果になることも

アドバイスをするときに多くのコンサルがやってしまいがちなのが、“数字”や“事実”をそのまま突きつけること”。もちろん、それが必要な時もあります。でも、それが相手のプライドを傷つける形になってしまっては、本末転倒です。

特に男性の院長先生には、「これが現実ですよ」「このままだとまずいです」といったストレートな言い回しがグサッと刺さりすぎてしまい、必要以上に落ち込んだり、防衛的になってしまったりすることがあるんです。

過去に私も、「先生、このままだと◯◯万円の損失になります」と数字を出して伝えた際に、先生がふと黙り込み、そこから攻撃的になってしまった…という苦い経験があります。そのときに強く感じたのは、「正しさ」はときに、人を深く傷つけてしまうということ。「どう伝えるか」が、「何を伝えるか」よりもずっと大事なんだと、今は心から思っています。

感情ベースで想像させる伝え方を意識する

私は、アドバイスを伝えるときに「感情を想像させる」伝え方を意識しています。

「感情を想像させる」伝え方とは…

たとえば、「数字が下がっているので見直した方がいいです」よりも、「最近スタッフさん、ちょっと元気がなさそうですよね。このままだと○○さんが辞めちゃうかもしれませんね…」と伝えるほうが、先生の心には届きやすいです。

院長先生は日々の業務に追われて、スタッフのちょっとした変化に気づけていないことも多い。そんなときに、こちらがそっと“気づき”のきっかけを与えることで、先生の視点が変わっていくことがあります。

人は、“数字”よりも“人間関係”や“感情の動き”のほうがリアルに感じやすいものです

ポイントは、「危機感を煽る」のではなく、“共感”をベースに伝えること。

「このままだと定期のキャンセルが増えてしまいますよ」ではなく、「患者さんは、“ちゃんと見てもらえてる”って思えないと、来院モチベーションが下がっちゃうんですよね」といったように、“人の気持ち”に焦点を当てた伝え方をするだけで、伝わり方が全然違います。

もちろん、数字や事実も必要です。でもそれを伝えるときには、「この数字が意味する“人の感情”や“現場の空気感”」を一緒に描写してあげる。そうすることで、数字も先生の中に“体感”として落ちていくのだと感じています。

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まとめ|数字よりも、まず“心”に寄り添う

歯科医院のコンサルタントというと、「問題を見つけて、解決策を提示する人」と思われがちですが、私が現場で大切にしているのは、先生の隣に立って一緒に悩み、考え続ける“伴走者”であることです。

もちろん、数字やデータや経験に基づいたアドバイスも大切ですが、それ以上に、院長先生の気持ちに寄り添い、信頼される関係を築くことが、最終的な成果に直結すると実感しています。

正論だけでは、人の心は動きません。どれだけ良い提案でも、先生の価値観やタイミングに合っていなければ、受け入れてもらえないこともある。だからこそ、共感をベースにした関わり方が必要なんです。

相手の大切にしているものを理解しながら、

「この人となら、一緒に良くしていけそう」

そう思ってもらえる存在になること。

それが、歯科コンサルタントとしての本当の役割であり、「この人になら本音を話せる」と思ってもらえたとき、初めて“課題解決”がスタートするのだと、私は信じています。

みなみ あんず
D.HIT編集部 みなみ あんず
歯科衛生士歴6年目の時に、結婚による引っ越しを機に勤めていた歯科医院を退職。 「家族との時間を諦めたくない」「歯科業界で働く人の笑顔を増やしたい」と思い、フリーランス歯科衛生士に。 現在は臨床時代に培った経験をもとに、歯科衛生士ライターやコンサルタント・動画編集者として在宅メインで活動中。