「公務員歯科衛生士」ってどんなイメージがあるでしょうか?
「安定してるけど、仕事は地味そう」「臨床スキルが落ちたら戻れないのでは?」
そんな声もよく聞きますが、実際は、臨床とはまったく違うやりがいがあり、家庭との両立がしやすい働き方でもあります。
私は、市役所で6年間、公務員歯科衛生士として働いた経験があります。この記事では、私の公務員時代の実体験を交えながら、公務員歯科衛生士の仕事内容や給与、やりがい、向き不向きまで、徹底的に解説します。
「公務員として働く歯科衛生士って、実際どうなの?」
そんな疑問を持っている方、これからの働き方に悩んでいる方、キャリアの選択肢を広げたい方へ、現場経験者のリアルをお届けします。「こんな働き方もあるんだ」と感じていただけたら嬉しいです。ぜひご覧ください。
公務員歯科衛生士ってどんな仕事?
数少ない、公務員として働く歯科衛生士。その仕事は、一般的な臨床現場とはまったく異なる日常でした。「患者さん」ではなく「地域の方々」を対象に活動という違いは、とても大きなものだと感じています。
働く場所と対象
多くの公務員歯科衛生士は、市区町村の保健センターや子育て支援課を拠点に働きます。私が勤めていたのも、地方の市役所の中にある子育て部門を担当する部署でした。また、高齢者を支援する課にも歯科衛生士の配属がありました。
対象は赤ちゃんから高齢者まで、その地域に住むすべての世代。診療室ではなく、地域の現場が主なフィールドになります。
- 各地区での母子保健
- 保育施設や小中学校での歯科保健指導
- 高齢者施設や通いの場での歯科保健活動
- 地域イベントでの歯科保健啓発
例えば、私は月に5〜6回、健診の場で地域の親子へ向けて、歯ブラシのやり方などのアドバイスをする法定健診を担当していました。TBIも、歯科クリニックの診療室で行う時とは少し違います。診療室で行うTBIでは、小児患者だと主に親に対して歯科指導を行うことが多いかと思いますが、健診の場では、家族構成や職業、子どもの発達や特性の話まで話が多岐に渡ります。実際の暮らしや背景まで関わり、「こういう場合は、ママではなくおばあちゃんでもいいのでは?」など、生活に根ざした助言をすることが求められます。
公務員歯科衛生士はどこで募集しているの?
意外と知られていませんが、公務員歯科衛生士は各自治体が不定期で募集しています。毎年度4月以降に職員募集が始まりますので、定期的にネット検索をしてみてください。春先の第1次募集に歯科衛生士の募集がない場合も、夏前や冬に第2次、第3次で募集が出ることがあります。多くの場合は年度での採用となるため、年度途中での採用はなかなかないと思います。市区町村の公式ホームページから募集要項を見たり、「〇〇市 職員採用 歯科衛生士」のようなキーワード検索をするとヒットすると思います。
1日のスケジュールと仕事内容
公務員歯科衛生士の仕事は、毎日決まった業務内容…というわけではなく、日によって様々。健診や相談対応、電話応対、記録、事務処理など、バラエティ豊かな業務をしています。一つの例として、私のある1日をご紹介します。
歯科クリニックだとラストが20時などの遅くになることもありますが、公務員は毎日17時15分が定時です。臨床のように予約時間になったら患者さんが来るというよりは、突発的に住民が来て歯科相談を行うこともあります。加えて、記録や報告の量が多く「誰が、いつ、どこで、どんな支援を受けたのか」行政文書として残す必要があるのでそういった事務作業は多いです。
- 健診(乳幼児健診、妊婦健診、、高齢者健診)での歯科指導
- 地域教室での講話(離乳食の話、口育の話、むし歯予防など)
- 歯科医師会との連携(歯科受診勧奨、情報提供など)
- イベント時のブース出展・啓発活動
- 電話、窓口相談への対応
- 各種統計、国や都道府県への報告書作成
- 企業歯科保健活動への支援
見てもらえればわかるように、主な仕事は歯科指導や啓発活動、相談対応、記録作成などの事務作業になります。たまに友人から「歯石とかとらないの?」と聞かれることがありますが、原則として医療行為は行いません。診療ではなく支援を行うのが公務員歯科衛生士の役割となります。
時々、「3歳児健診でむし歯があると言われてクリニックを受診した子、診察してみたら全くむし歯なかったよ」…なんて言われることがあります。これは診断ミスというわけではなく、法定健診はあくまでもスクリーニングのため、むし歯を診断するのに十分な環境ではないのです…。そのため、実際に診察室で診てみるとむし歯がない、ということもあるのです。
地域に貢献する歯科保健とは
公務員歯科衛生士として働いて感じたことは、「地域の中で、人と人をつなぐ存在」になることの重要さです。健診に来る親子、高齢者、保健師、栄養士、言語聴覚士、心理士ーー様々な人と関わり、そのすべての人との信頼関係の上で、業務が成り立っており、成果につながっていくと考えています。
多くの場合は、1年間の活動を報告して評価した後、来年度の活動内容を検討し、どのくらいのお金がかかるかを予想し、予算を取るための準備をしていきます。すごくマニアックな話になるのでここでは深く書きませんが、この「予算を取る」ことがすごく大変なんです。なんせ住民からいただいている税金ですので、無駄なことには使えません。
- この活動は本当に必要?
- 本当にこのくらいのお金がかかるのか?
- やる意味・意義はあるか?
- 実施後、効果が出る活動なのか?
などなど、あらゆる質問に備えて準備をしていきます。
臨床経験は活かせる?
「臨床はしない」という話をしましたが、歯科衛生士としての臨床経験を活かすことはできないのでしょうか?配属される部署にもよりますが、臨床で積み上げてきた経験は、公務員としても十分に活かすことは可能だと思います。
実際に私も試験の面接で「お子さんへの歯磨き指導をしたことがありますか?フッ化物洗口を指導したことはありますか?」など具体的なことを聞かれました。
患者さんとの対話力や共感力が求められる臨床の現場では、患者さんとの信頼関係を築きながら治療を進める中で、言葉選びや態度の細やかさを磨いてきたことと思います。
その力は、公務員の現場でも、相談対応や講話の場面で大きな力になります。特に親子の歯科相談の場面では、「怒られるのでは?」と構えている保護者の気持ちをほぐしながら話す必要がありますし、高齢者の訪問では、最初の10分間は世間話くらいの余白を持って接することが信頼構築には不可欠です。
ただし、臨床と公務員の現場では、「活かし方」が少し異なる部分もあります。
臨床では自分の手で処置を完結させますが、公務員は「関係者に伝えて動いてもらう」場面や「継続できるように仕組み化する」といった間接的な関わりを求められる場合が多くあります。そのため、説明力・状況判断力・相手に合わせる力がより一層求められるのです。
「この人にどう関われば、少しでも生活がよくなるだろうか?」という視点があれば、臨床経験はそのまま地域の健康支援に変換できると感じています。
安定だけではない?!公務員歯科衛生士の給与と働き方
一般的に「公務員は安定している」と言われていますが、「歯科衛生士として公務員で働く場合は、実際どうなの?」と思う人もいるのではないでしょうか。歯科クリニックで働く歯科衛生士さんには、なかなか想像しにくいかと思います。
私が実際に市役所の歯科衛生士として勤務して感じたのは、「確かに安定はしているけれど、良いことばかりではない」という現実でした。ここでは、私の経験も交えながら、公務員歯科衛生士の働き方のリアルをお伝えします。
給与水準のリアル
公務員の給与は、基本的に「職種別、号棒制」で決まっています。堅苦しい言葉になりましたが、「グレードや何年目かなどでレベルが決まっていて、そのレベルにあった給与がもらえる」というイメージです。自治体によって多少の違いはありますが、多くは全国で同じような水準になっています。基本的には年功序列となるため、毎年少しずつ昇給はするものの、給料が飛躍的に伸びることはないです。
私の場合は職員として採用された時点で、民間企業で産休育休含めて10年以上勤めた後でしたので、その経験も反映されたお給料になりましたが、同期の新卒の歯科衛生士は月給約23万円ほどでした。ここに、地域手当や通勤手当などが加わるイメージです。
月収ベースで考えると、正直、歯科クリニックで高収入の歯科衛生士さんに比べるとちょっと少ない印象でした。ただ、ボーナス(賞与)は年2回、夏と冬にあります。年間で5ヶ月弱もらえるので、ここは公務員の大きな魅力だと思います。そのため年収ベースでは、臨床現場よりやや高くなるケースがあります。
私が勤めていたのは女性が多い職場でしたが、保育園に子どもを預けて働けて、ボーナスもしっかり貯金できることをメリットに感じているという方が多かった印象です。
福利厚生や休暇制度は充実!
出産・育児を考える世代にとって、公務員の福利厚生は大きな安心材料になると思います。私は子どもを出産したあとに公務員になりましたが、子どもが小さいうちの手当てもとても手厚かったです。
- 育児休業…最長で子どもが3歳になるまで
- 子育て休暇…子ども1人の場合、年度中に7日まで
- 短時間勤務制度…週2勤務、週3勤務、9〜12時、9〜15時など勤務体系を選べる
- 時間単位の有休消化…1時間毎に有休が使える
特にありがたかったのが、「時間単位で取れる有休」でした。私の子どもは幼稚園に通っていたので園内行事も多く、例えば「幼稚園の発表会の間、2時間だけ抜けたい!」といった時に柔軟に対応できる点は、とてもありがたかったです。子どもの体調不良で病院に行きたい時も、「15時から病院だから、ラスト2時間だけ抜ける」ということも可能でした。以前メーカー勤務だった頃は有休の単位が「午前・午後」だったので、どんどん有休がなくなっていきましたが…公務員では時間単位で消化されるので、とても有効的に使えました。
また、地方公務員共済組合というものに加入しているので、社保、宿泊施設や遊園地の補助、傷病手当、介護休暇など、手厚いサポートもあります。
子育てに理解のないクリニックだと「また子どもの都合で休んで…」なんてことを言われるという友人の話を聞いたことがありますが、公務員は平等です。子育て世代だけでなく、40〜50代の女性も親の介護のために休暇を利用して休んでいることも多かったです。「家庭の事情は、年齢に関わらずお互い様」という雰囲気があり、嫌味を言われることもなく、ストレスなく勤務できました。
歯科クリニックとの違い
仕事の進め方や人間関係、やりがいの種類などが大きく違ってくるので、クリニック勤務から公務員歯科衛生士になると、最初は戸惑うことも多いかもしれません。
スピード感の違い
歯科クリニックでは、「じゃあ明日からこの指導内容を追加しよう!」と院長の一声ですぐに動くことができますが、公務員はそうはいきません。
例えば、「地域の子育てイベントでフッ素塗布をしたい」という案が出たとします。一般的な想像だと、場所やスタッフ、物品さえ手配できれば、比較的すぐに実現できることのように思えますよね。でも公務員の場合は…
①実現可能か、所属する上司などと会議
②予算があるか確認(予算がなければ、その年にはできない)
③所属の長の決裁(決裁とは「やっていいよ」の許可)
④住民への周知方法を検討
⑤実施する体制を会議
こんな具合に、場合によっては何ヶ月もかかってしまうんです。やりたいことがすぐにできないという点に、歯痒さを感じることも多いです。
税金を使わせてもらっているという感覚
先ほども少し触れましたが、公務員の仕事は何をするにも税金を使うことになります。「税金を使っている」という感覚は、歯科クリニックや一般企業ではなかなか無いですよね。だからこそ、決して無駄なことはできず、新しいことを始めるにもそれが本当に必要か十分に審議が必要なんです。配布資料を印刷するときのミスプリント1つにおいても、「税金を無駄にしてはいけない」という気持ちをいつも持っていました。
給料についても同じです。私が歯科医院にコンサルで入ったときにスタッフさんに必ず伝えているのが、「お給料の7割は診療報酬です」という話。つまり、患者さんの自己負担以外の7割は保険料や税金などの公的なお金が財源になっているよ、ということですが…これが公務員の場合はもっとわかりやすく、給料の100%が住民の皆様からいただいた税金から支払われています。(実際に窓口で、ご自身の意見が通らない住民から「税金で飯食ってんだろ!」と言われている職員を何度も見かけたことがあります…。)
公務員として働く以上、「税金を使わせてもらっている」「税金でお給料をもらっている」ということは常に意識していなければいけないと思っています。
人間関係は臨床より楽?
これは職場の雰囲気にもよりますが、私個人の感覚としては「臨床よりもずっとラク」でした。特に、保健師、栄養士、事務職など役割が分かれていて横並びなので、お互いの仕事を干渉することがほとんどない、というのがとてもやりやすかったです。上下関係も比較的ゆるやかで、医療ではなく行政といいう視点を持つ人が多いため、穏やかな空気であったことも救いでした。
何か事業を行うときにも、毎回同じ人と関わるわけではなく複数のチームで活動することが多いため、気持ちも分散できます。もちろん、苦手なタイプの上司や職員がゼロというわけではありませんが、私の部署では40人弱の職員がいましたので、嫌なら適度な距離を持って対応すればよいという感覚でした。苦手な院長や先輩と毎日狭い空間で仕事をしないといけない…なんてことはないので、その点ではストレスフリーでした。
臨床スキルが落ちたら、臨床に戻れない?
これは、実際に私もよく聞かれることです。公務員歯科衛生士は基本的に医療行為はしません。スケーリングも、P検も、チェアサイドでの施術もないです。確かに長い間臨床を離れていると、次に臨床に戻りたいと思った時、なかなか勇気がいるものかもしれません。
私自身、公務員になって数年経った頃に、「自分の手がどれくらい動くか不安…」と感じたこともあります。6年の公務員歯科衛生士時代を経て現在臨床もやっていますが、確かに戻ったときには戸惑いを感じることもありました。でも、機材や使う材料、診療の手順が大きく変わっていることはなかったので、だんだん感覚を取り戻すような気持ちでやっています。歯科衛生士としてのスキルに関しては、臨床現場に行くことが視野に入った段階で、ハンズオンセミナーや書籍で最新情報を取り入れるなどしていましたので、大きなギャップを感じることもありませんでした。
働いてみて感じた「やりがい」と「モヤモヤ」
一般的な歯科クリニックでは味わえない種類の「やりがい」がある一方で、「あれ?なんか違うな?」と感じる瞬間が生まれることもあります。ここでは、公務員歯科衛生士として働いてみて見えてきたことをお伝えしたいと思います。
自分の言葉が地域を変える喜び
公務員歯科衛生士として働く中で最もやりがいを感じたのは、「一人の歯科衛生士として、地域に影響を与えられている」と実感できた瞬間です。
ある時、集団で行うフッ化物洗口に関わったことがありました。フッ化物洗口は歯科クリニックで個人的にやっている人もいますが、数は少ないため、それを主に保育施設や小中学校など集団で行うことを推進していました。エリア内の各施設を周っている中で、地域的にむし歯が多いエリアにある小学校の校長先生に声がけいただいた一言が、今でも心に残っています。
「この事業は本当に、うちの学校のためにあるようなもの。家庭で歯磨きをやらない家庭もある中で、学校でみんな一緒にフッ化物洗口できるというのは本当にありがたい。子どもたちの健康を少しでも守れるなら、とてもいいことだと思う」というものでした。自分の活動が、地域の子どもたちの健康を守ることに繋がっていると実感した瞬間でした。
また、公務員として長く勤めていると、長期的に住民の方の生活に寄り添いながら、変化を見守る関係性が構築できます。最初お会いした時は1人目を妊娠中だったご家族が、ご出産され、子どもの定期健診を経て、時が経ち2人目を妊娠・出産され…その中でご家庭との会話も増えていきますし、長い目で家族を見守り支えているという実感が湧くのも、公務員歯科衛生士ならではだと思います。
現場で感じた限界ともどかしさ
逆に、現場でもどかしさを感じることもあります。事業の実行に時間がかかるというスピード感のお話はすでにしましたが、その他にも「ああ、なんでこうなってしまうんだろう…」と、制度や組織の壁の高さに悔しい思いをすることもありました。
近年はむし歯がない子のほうが増えてきましたが、保育施設での歯科健診集計を行っていると、まれに3歳でむし歯が20本という子がいたりします。そのようなご家庭だと歯科受診に対して消極的な家庭も多く、5歳になると脱落してしまいます。手助けの切り口にもよりますが、保育施設での集団指導の場合は子どもたちへのアプローチが主で、親御さんへは書面でお知らせするのみ。親御さんには直接会えないケースが多く、それ以上はどうすることもできずに、もどかしさを感じていました。
公務員歯科衛生士になるには?
ここまで読んで「私にも合うかも?」と思った人もいるかもしれません。公務員歯科衛生士に向いている人、どうすればなれるか、などお伝えします。
こんな人が公務員歯科衛生士に向いている
臨床も見てきた経験と周囲の公務員歯科衛生士の方々の傾向も踏まえて、向いている人特徴を整理してみました。
- 多くの人と関わって仕事ができる人
- 調整力がある人
- 人の話を聴ける人
- 安定を重視したい人
公務員は、そもそもの部署に20〜30人の在籍があり、全員がほぼ毎日顔をあわせて同じ部屋の中で過ごします。また、外出先の方や、他部署と協働することが非常に多いと言えます。一人で完結させるというよりは「一緒に作っていく」仕事にやりがいを感じられる人は、向いていると思います。
また、自治体内での調整や関係機関との日程調整、住民とのやりとりなど、とにかく段取りが重要です。根回しや連絡を丁寧にできる人はとても重宝される印象があります。
「人の話を聴ける」というのは臨床でも重要なことですが、公務員歯科衛生士は臨床以上に、相談業務がとても多い仕事です。長い時は2時間以上同じ人とずっと話をしていることもあります。まずは「話を受け止める力」が求められます。結論を急がず、相手の立場に立って考えられる人は公務員歯科衛生士に向いています。
「安定」は公務員のイメージ通りですが、給与や福利厚生、育休制度など、人生設計を立てやすい働き方を希望する人にはピッタリです。
向いていないかもしれない人
そもそも患者さんへの治療がありませんので、当然ですが臨床をバリバリやりたい方にはオススメできません。「とにかく手を動かして目の前の患者さんをどんどん良くしたい」「診療補助や歯科衛生士としての技術を磨きたい!」と思っている歯科衛生士には難しいと思います。また、スピード感が大事な方や、指示がなくてもどんどん自分で即行動したいタイプの方は、もどかしさや物足りなさを感じやすいと思います。ただ、一度公務員になったらずっと辞められないというわけではありません。(私は公務員を6年経験して、フリーランス歯科衛生士になりました)私のように、人生のステージによって、公務員という選択肢がフィットする時期もあるかもしれません。
試験って難しい?どんな人が採用されるの?
正規の公務員歯科衛生士になるためには、地方自治体が実施する採用試験を受ける必要があります。試験内容は自治体によって異なりますが、私の場合はこんな感じだったと思います。
- 一次試験:筆記(一般教養・専門試験)
- 二次試験:小論文
- 三次試験:個別面接
筆記の一般教養は、イメージ的には国語や数学です。高校〜短大卒程度の知識で対応できますが、時間を有効的に使っていく必要があると感じました。専門試験は、憲法や民法、行政学など。ある程度勉強しておかないとチンプンカンプンかも…しっかり準備しておきましょう。
その後、小論文の試験があります。私の時は「環境汚染に関して自分の意見を小論文にまとめなさい」といったような内容だったと思います。
個別面接は、会社の面接でよくあるような雰囲気でした。人事課から2人、総務から2人など、複数の面接官と面接します。私の場合は、グループ面接やグループディスカッションはありませんでした。
勉強のポイント
私は、手っ取り早く本屋さんで参考書を購入しました。当時まだ3ヶ月の子どもを抱えながらの勉強だったので大した時間は裂けませんでしたが、参考書があると内容を絞って学べるので、効率的に準備できたと思います。
小論文は書き方だけ勉強しておいて、あとはネットニュースを毎日見るように意識する程度でした。面接も、学生の時と違い練習の相手をしてくれる人はいないので、イメトレだけして挑みました。面接では「歯科衛生士として、行政で何がしたいか」を細かく問われた記憶があります。
入庁してから感じたのは、「民間経験がある人」「育児経験がある人」など、地域住民の視点を持っている人材が好まれる傾向がある、ということ。臨床経験は何年あっても損はありません。ただ、公務員歯科衛生士になれるかどうか、一番大事なことはタイミングだと思います。公務員は、基本的には採用されたら定年まで辞めない人のほうが多いです。退職がないと空きが出ないので、求人の数自体とても少ないのが現状。いつが空きが出るかはわからないので、興味がある方は、4月・7月・9月と定期的にいろんな自治体のホームページをチェックするとよいでしょう。
まとめ
公務員歯科衛生士の仕事は、「安定しているから選ぶ」というだけではもったいないくらい、やりがいのある働き方です。歯科医療の枠を超え、地域の人々の暮らしに寄り添いながら、支援というかたちで専門性を活かすことができます。
もちろん、制度上の制限や臨床スキルの維持といった課題はあるものの、自分のペースでキャリアを築けるという点では非常に魅力的です。
「辞めたくならない職場」とは、“居場所”と“役割”がある職場。公務員歯科衛生士はそこが明確なので、辞める人も少ないんです。もしあなたが今の働き方に悩んでいるなら、公務員歯科衛生士も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。