歯科衛生士として、こんな日々のモヤモヤはありませんか?
「患者さんがなかなか定期的に通ってくれない…」
「予防歯科の重要性を伝えても、響いていない感じがする…」
実は、患者さんが予防歯科に通い続けるかどうかは“歯科衛生士の伝え方”に大きく左右されると言われています。どんなに素晴らしい技術があっても、患者さんがその価値に気づいていなければ意味がありません。
この記事では、
- 患者さんのモチベーションを上げるアプローチ方法
- 予防歯科の重要性を無理なく伝えるコツ
- 「またこの人に診てもらいたい!」と思ってもらえるコミュニケーション術
をわかりやすく解説します。
これを読めば、明日からの診療で「患者さんが自然と通い続けてくれる歯科衛生士」になれるかもしれません!さあ、今日から一緒に“伝え上手”を目指していきましょう!
予防歯科で得られるメリットを患者さんに伝える
「痛くないのに、予防で歯医者に行く必要があるの?」
予防歯科の重要性を伝えるとき、よく患者さんからこういった疑問を聞くことがあります。実際、日々の診療で対応する患者さんは、歯が痛くなったり、問題が起こるまで来院しない方がほとんどではないでしょうか?特に「歯医者=治療のために行くところ」というイメージを根強く持っていれば、何も症状が出ていない状態で通うことは“お金の無駄”だと感じている人は多いです。
「予防歯科は重要」ということは私たち歯科衛生士にとっては当然のことですが、これを患者さんにわかってもらうには、どう伝えるのが効果的なのでしょうか?
納得やイメージができないと動けないのが人間です。まずは、患者さん自身のお口の中に興味を持っていただくところからがスタートです。
私が実際に臨床でやっていた方法をお伝えしていきます。
「痛くなる前に行く重要性」の伝え方
まず、なぜ予防で歯科医院に行く必要があるかというと…
- ただのクリーニングやチェックではなく、健康を維持するために重要な役割を持っている
- 早期発見・早期治療で歯を長持ちさせ、全身の健康にも良い影響をもたらす
- むし歯や歯周病は初期の段階では痛みが出にくく、気づいた時には大きな治療や処置が必要になることが多い
だからこそ、「痛くなってからでは遅い」「予防で通院してほしい」と伝えたいですよね。
行動心理学で言うと、人は「未来」より「今」を優先しがちなんです。なので、予防歯科の価値を理解してもらうには、今を超えて未来の自分を意識してもらうことが重要です。
たとえば意識が高い人に対しては、未来の自分への投資というふうに伝えていました。逆に、今の生活で精一杯という人には、20年後に歯が痛くなって何十万の治療費がかかるよりも、定期的に行ってトータルの治療費が低い方が良くないですか?というふうに伝えたり。
「定期的に検査しておけば治療しなくて済む」という安心感も、予防歯科の大きな魅力です。痛くなってから慌てて予約を取り、治療でさらに痛い思いをするよりも、定期的なチェックでリスクを回避しておけば、気持ちもずっと軽やかでいられますよね。
心理学ではこれを「遅延報酬(Delayed Gratification)」と呼びます。人は目の前の快楽や節約を優先しがちですが、将来の利益を見据えた行動が本当に賢い選択になることを説明するのが、予防歯科における重要なアプローチです。数年先の未来のことを考えてもらえる声かけを意識して、未来への投資というイメージを持ってもらいましょう。
歯が健康=全身の健康につながることを理解してもらう
「歯の健康が体全体に関係している」——この事実を知らない患者さんは、まだまだ多いです。歯周病が進行すると、口の中だけではなく、全身にも悪影響を与えるリスクがあることは、最近の研究でも明らかになっています。
実際に歯周病は「沈黙の病気」と呼ばれるほど自覚症状が出にくい一方で、心臓病や脳卒中、糖尿病との関連が強いとされ、海外では「歯周病は全身疾患の一部」とまで言われることもあります。
正確な情報をできるだけわかりやすく、そして患者さんの生活に結びつけて伝えることがポイントです。
たとえば、
「実は、歯ぐきの炎症が血管にも影響を与えて、心臓病のリスクを高めるってご存知でしたか?」
このように問いかけ形式にすることで興味を引きつけることができます。
糖尿病の方には
「歯周病と糖尿病はお互いに悪影響を及ぼす関係なので、お口のケアが血糖コントロールにも役立つんですよ」
と伝えると、ぐっと関心を持ってもらいやすくなります。
行動心理学の「社会的証明(Social Proof)」も効果的です。人は「他の人がやっていること」に安心感を抱き、同じ行動を取りたくなる傾向があります。これをふまえると、
「○○市では40代以上の多くの方が、健康維持のために定期的にメンテナンスに通われていますよ」
このような伝え方は説得力があり、行動につながりやすいです。
科学的なデータと、日常に落とし込んだ言葉。これらを組み合わせて伝えることで、患者さんの中に「予防は口だけの話じゃない」という新たな視点が芽生え、通院へのモチベーションも自然と高まっていきます。
経済的なメリットを強調する(治療費削減・長期的コスパ)
「予防歯科って、結局お金がかかるでしょ?」という声も、少なからず耳にします。ですが実際には、その考え方こそが将来的に大きな出費を招いてしまう原因になることも。だからこそ、私たちが伝えたいのは「予防こそが一番の節約」という視点です。
定期的にクリーニングやチェックを受けることで、初期段階のトラブルを早期に見つけることができれば、1回あたりの治療費は非常に安く済みます。3ヶ月に1回メンテナンスをしていれば、年間でも数万円の出費。むし歯が小さいうちなら1回数千円の治療で済みます。でも放っておくと神経を取る処置が必要になり、何万円もかかることに。さらに進行すると、被せ物やブリッジ、最悪の場合は歯がダメになってインプラントや入れ歯が必要になると、1本あたり30〜50万円ほどかかることもありますよね。
この「長期的に見ると大きな差になる」という考え方は、患者さんにとっても響きやすいポイント!特に家計を管理している主婦層や、子育て中のママ世代にとっては、「未来の出費を今のうちに抑えられる」という感覚は安心材料のひとつです。
ここで活用したい心理学の概念が「損失回避(Loss Aversion)」です。人は「得をすること」よりも「損をしないこと」に強く反応する傾向があります。つまり、「予防すればお金がかからない」と言うよりも、「予防しないと高い治療費がかかりますよ」と伝える方が、行動につながりやすいんです。
また、「予防していれば痛い思いもしないですし、時間も取られずに済みますよ」と、費用だけでなく“時間”や“ストレス”といった見えないコストにも言及すると、患者さんはより納得してくれます。
予防歯科は「今ちょっとの手間とお金で、未来の自分を助ける行動」。この言葉が患者さんの心に届くように、丁寧に寄り添いながら説明していきたいですね。
患者さんのモチベーションを上げるユニットサイドでの声かけ
皆さんは、パーソナルジムやゴルフ、楽器など、続けるごとに上達していくような習い事をしたことはありますか?経験のある人は分かると思いますが、あれは自分のモチベーションよりも、遥かにコーチとの相性や声掛けが重要になります。興味があって始めたのに怒られてばかりだと、続きませんよね。
歯科医院も同じです。しかも、好きな習い事ではなく歯医者という嫌な場所に行く…ということも加味すると、通院を続けられるかどうかはほぼ歯科衛生士次第といっても過言ではありません。
定期的な通院やホームケアは痛みなどの症状がないと後回しにされがちだからこそ、手厚いフォローやコミュニケーションが必要です。
実際になんて言っていいかわからないという悩みも多いので、ユニットサイドで使える患者さんへの声の掛け方をご紹介します。ぜひ臨床で使ってみてください!
患者さんが通院を続けたいと思うには…
ただでさえ気が重い歯医者。通い続けたいと思ってもらうために、患者さんの自己効力感を高める声かけをしていきましょう。
「自分はやればできる」という自信のこと。この自己効力感を高めることで、人はより積極的に行動するようになり、モチベーションの持続にもつながるとされています。
「〇〇さん、今回は歯茎の出血がほとんどなかったですね!この調子ですごく良くなってきてますよ」
まずはこのように、具体的に変化を伝えること。こうした前向きなフィードバックは、患者さんにとってやり方が合っているという“自信”になります。
自分の努力が結果につながっているとわかると「わからなかったことがわかるようになる」➡︎「自分にもできる」➡︎「通う価値がある」と感じやすくなります。
目に見えづらい口腔内の変化を、プロである歯科衛生士が教えてくれることで、自分では気づけなかった成長を実感できる。これが、次回も「また褒められたい」「もっと良くなりたい」という気持ちを引き出すモチベーションの源になります。
反対に、問題点ばかりを指摘してしまうと、「ちゃんとやってるつもりなのにダメ出しされた」と落ち込み、通院自体がプレッシャーに…。私自身、過去に続かなかった習い事はまさにこのパターンでした。私は楽しく続けたかったのに対して、指導が厳しいコーチ。「センスがあるから」と期待してくれてのことだったのですが、次第に足が遠のいてしまいました。好きな習い事でさえ、コーチの言動次第でそうなってしまうのですから、歯科医院ではなおさらです。
歯科衛生士は、できるだけポジティブな変化に目を向け、「頑張っている姿勢」を認めてあげることが大切です。自己効力感を育てる声かけを意識することで、患者さんは「自分にもできる」と自信を持ち、通院やホームケアを前向きに続けられるようになります。
できていることを認める(ポジティブ強化)
「できていることを認める」とは、“現在の行動や変化を承認する”ための具体的な方法。患者さんのモチベーションを維持・向上させるためには、「できていないこと」ではなく「できていること」に焦点を当てる姿勢が最も大切です。
歯科衛生士は専門職として、つい細かい部分に目がいってしまいがちですが…まずは患者さんの前向きな変化を見つけて、きちんと言葉で伝えることがポイントです。
「前よりも歯の表面がツルツルしてますね。おうちでのケアがしっかりできている証拠ですよ」
このように声をかけることで、患者さんは「私、ちゃんとできてるんだ」と前向きな気持ちになれます。これは行動心理学の「ポジティブ強化」にもとづいたアプローチで、やる気を引き出すうえでとても効果的です。
「ここがまだ磨けていないですよ」と否定的な指摘ばかりでは、患者さんは「やっぱり自分はうまくできない」と感じてしまい、「頑張っても意味がない…」と通院やセルフケアに対するモチベーションが下がってしまいます。もちろん指摘すべきところはあるけれど、それ以上に「できているところ」にフォーカスするだけで、患者さんの気持ちは大きく変わります!
褒めるときは漠然と「良いですね」ではなく、具体的な行動に対して伝えるのがコツ。
「夜の間食を減らせたんですね、素晴らしいです」
たとえばこのように努力のポイントを言語化してあげると、患者さん自身も「どこが良かったのか」が明確になり、継続しようという気持ちにつながります。
通院はあくまで習慣のひとつ。日々のモチベーションを支えるには、患者さん自身が「やれば変わる」「自分にもできる」と実感できることがカギ。そのために歯科衛生士が意識すべきなのは、完璧を求めすぎず、小さな成長や変化を“発見”し、“言葉にして伝える”こと。ちょっとした声かけの積み重ねが、長く通ってもらえる信頼関係を育てる第一歩になります。

小さな成功体験を伝える
「小さな成功体験を伝える」は、“過去の行動の成果を成功として実感させる”方法です。
予防歯科の難しさのひとつに、「成果が見えにくい」という点があります。むし歯の治療のように明確なゴールがないため、患者さん自身も「良くなっているのかどうか」がわかりにくく、モチベーションが続かない原因になりがちです。だからこそ、歯科衛生士からの“成功体験の可視化”がとても重要になります。
「前よりも歯茎の炎症が減ってきてますね」
「今日は出血が少なかったですね」
「歯の表面がツルツルしていて、プラークも付きにくくなっていますよ」
こういった具体的な変化を、その都度伝えることがポイント。患者さんが「自分は前に進めている」と感じられれば、やる気も自然と湧いてきます。
人は、自分の努力が結果として見えるときに、最もやる気を出しやすいと言われています。これは心理学でいう「報酬感覚」に近く、たとえその成果が小さくても、定期的にフィードバックされることで「やって良かった」「これからも続けよう」と思えるのです。特に予防分野では、改善までに時間がかかることもあります。そうした中で歯科衛生士が小さな変化を拾って伝えてあげることで、患者さんの不安を取り除き、前向きな気持ちに導くことができるんです。
「歯ブラシのあたり方が上手になってますね」
「奥歯の汚れが減ってきてますよ」
これだけでも、患者さんの表情はぱっと明るくなるもの。自分の努力を“見てくれている”と感じられることで、医院への信頼感も高まります。
この「成功体験を伝える力」は、まさに歯科衛生士のスキルのひとつ。細やかな観察力と、温かいコミュニケーションで、患者さんの通院の目的を“義務”から“自己成長”へと変えていくことができます。大きな変化でなくていい。むしろ、日々の中にある小さな変化を見つけ、それを言葉にして伝えてあげることが、患者さんの心に響くのです。その積み重ねこそが、モチベーションの土台となり、「また来たい」と思ってもらえる関係性を築いていく鍵になります。
患者さんは歯科の知識がない前提で話す
歯科衛生士として長く働いていると、専門用語や知識が当たり前になってきます。でも患者さんにとっては「当たり前」ではないということを忘れてはいけません。“歯科の知識がない前提”で伝えることが、信頼される衛生士になるための第一歩です。
たとえば「歯周ポケットが深くなっていますね」と言われても、患者さんからすると「深いってどれくらい?」「それって悪いこと?」と、ピンと来ないことがほとんど。実際、知識がないまま話を聞くと不安ばかりが先行してしまい、「なんだか怖い」「説明がわかりにくい」と感じさせてしまうこともあります。
大切なのは、かみ砕いてわかりやすく話すこと。
「この歯の周りにある溝が、健康な人だと2〜3mmくらいなんですけど、〇〇さんの歯は今5mmくらいあって、ちょっと深くなってます」
たとえばこのように、数字の「基準」を伝えるだけでも、患者さんの理解度はグッと上がります。
「歯垢(プラーク)」や「歯石」といった言葉も、わかっていそうで実は正しく理解されていないことが多いもの。なので、「歯垢というのは、細菌のかたまりで、時間がたつと石みたいに硬くなるんです。それが歯石です」と、関連づけて説明してあげるだけでも「なるほど、そういうことか」と納得してもらえることが増えます。
常に意識したいのは、「相手の立場に立つこと」。どんなに丁寧に説明しているつもりでも、それが専門用語ばかりだったり、一方的な説明になっていたら、相手には伝わりません。
患者さんが不安なく通い続けられるためには、「自分の口の中のことをわかりやすく教えてくれる人」の存在が不可欠。歯科衛生士の役割は、ただ処置をするだけじゃなく、患者さんが「自分ごと」として口腔内に関心を持てるように導いていくことです。
だからこそ、「知らない前提」でわかりやすく、優しく、噛み砕いて伝える。それが、患者さんの信頼を得る近道であり、結果として“通いたくなる歯科医院”につながっていくのです。
通い続けてもらうためのコミュニケーション術
せっかく通い始めてくれた患者さん。できることならずっと通ってほしいですよね。でも現実には「一度きりで終わってしまう」「なかなか次の予約につながらない」と悩むことも多いはず。実はその原因、技術よりも“コミュニケーション”にあるかもしれません。
歯科衛生士の「声かけ」や「雰囲気」、つまり毎回のちょっとしたコミュニケーションが、患者さんが継続して通ってくれるかどうかに直結しているんです。
この章では、「また来たい」と思わせる声かけのコツや、言葉の選び方、自然な予約の取り方まで、すぐに使える実践的なテクニックをお届けします。ちょっとした言葉の工夫が、患者さんの心をぐっとつかむ。明日からの診療がもっと楽しく、もっと信頼される時間になるヒントが詰まっています。
ポジティブな声かけが一番大事?!
診療ユニットで何気なく交わす会話——「今日はお休みですか?」「最近、寒くなってきましたね」そんな他愛のない一言が、患者さんにとっては「ここに来ると安心する」と感じてもらえる大切な瞬間になります。
「〇〇さん、こんにちは。今日も来てくださってありがとうございます!」と笑顔で挨拶するだけでも、患者さんの心はぱっと明るくなります!
「ポジティブな声かけ」には、心理的な効果があります。人は、感謝や歓迎の気持ちを言葉にされることで、「自分はここにいていいんだ」「必要とされているんだ」と安心感を抱きます。これは“自己重要感”を満たす働きがあり、信頼関係の構築に大きく関わります。
また、治療が終わったあとに「今日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます」「次回もお会いできるのを楽しみにしていますね」といった「感謝の気持ち」を表す言葉はとても効果的。患者さんは、「こんなふうに丁寧に接してもらえるなんて嬉しい」と感じ、「また来よう」という気持ちが自然と芽生えます。
ポイントは、作業的ではなく、気持ちを込めること。同じ言葉でも、心がこもっているかどうかで、伝わり方がまったく変わります。
ポジティブな言葉は、医院の印象そのものを左右すると言っても過言ではありません。
「治療が痛くなかったから」ではなく、「この人に会いたいから通っている」。そんな患者さんを増やすために、明るい声と前向きな言葉を大切にしていきましょう。それが“また来たい”と思ってもらえる一番の近道です。
コミュニケーションで一番大事な、伝え方
歯科衛生士の仕事は、技術や知識だけで成り立つものではありません。患者さんにどう接し、どう伝えるか——つまり「伝え方」が、通院継続にも患者満足にも直結します。
私たちが持っている歯科の知識や経験は、患者さんから見ればまさに“未知の世界”。たとえば、「プラークがたまってますね」と言われても、「プラークって何?汚れてるってこと?怒られてるのかな…」と、逆に不安になることも。だからこそ、知識を“どう伝えるか”以上に、“どんな気持ちで伝えるか”がとても大切なのです。
その鍵になるのが、「共感(Empathy)」の力。患者さんは緊張したり、不安を抱えたりしながら来院しています。だからこそ、まずはその気持ちに寄り添い、「痛い思いをされたんですね」「初めてのクリーニング、不安ですよね」と感情に反応してあげましょう。
伝えるときの表情や声のトーンも大事です。明るく、優しい声で伝えるだけでも、同じ内容がぐっと柔らかく伝わります。逆に、専門用語ばかりで淡々と話すと、「なんだか冷たい印象」「ちゃんと説明してくれなかった」と受け取られてしまうこともあります。
そして何より、「否定しない」こと。
「ここ磨き残しありますよ」よりも
→「ここは歯ブラシが届きにくい場所なので、実はみんな苦戦するんですよ」
「もう少し力を抜いて」よりも
→「〇〇さん、強く磨きすぎちゃうクセがあるみたい。実はそれが原因で歯茎が下がることもあるので、一緒に直していきましょう」
このように寄り添いながら説明することも大事なポイントです!相手を責めずに、改善に導くことができます。
「この人なら、安心して話せる」と感じてくれることが、通いたくなる医院づくりにつながります。“伝え方”ひとつで、患者さんの心はぐっと動く。その力を、私たちはもっと信じて使っていきたいですね。
次回予約を「自然な流れ」で促す
次回予約をスムーズに取ってもらうことは、継続的な口腔ケアのためにも、医院経営の安定のためにも、とても重要なポイントです。でも、「次回もぜひ予約をお願いします!」とストレートに伝えると、プレッシャーに感じさせてしまうかも…。大切なのは、無理のない自然な流れの中で、次回予約を“当たり前の行動”として促すこと。
「今日の診療の締めくくり」として、次回を前向きに感じてもらえるようにするのがポイントです。「今回のクリーニングでかなりキレイになりましたので、この状態をキープするために、また3ヶ月後くらいに来ていただけるとベストです」といったように、“続ける理由”を明確に伝えるのが効果的です。
診療中の会話の中で、次回につながるワードを自然に入れておくのもおすすめ。
「次回は奥の歯をもう少しチェックしていきましょうね」
「今回の歯ぐきの状態、次回どう変わってるか一緒に見てみましょう」
といったように、“次回もある前提”で話すことで、患者さんの意識の中に次回通院が自然にインプットされていきます。
ここで大事なのは、「誘導」ではなく「提案」のトーン。患者さんが「断りづらい」と感じるような空気ではなく、「このまま通っていたらきっともっとよくなるかも」と思えるような、やわらかい雰囲気づくりを心がけましょう。
たとえば予約の取り方を聞かれたときには
「この後、受付で次回のご予約を取っていただけると、スムーズですよ」
「みなさん3ヶ月おきくらいで来られる方が多いですよ」
と、“他の人もやってる”という安心感を与える社会的証明のテクニックを使うのもおすすめです。
もし患者さんが迷っている様子なら、「無理のないタイミングで大丈夫ですので、次回もお待ちしてますね」と添えておけば、圧迫感を与えず、やんわりと通院の継続を促すことができます。
最終的には、患者さん自身が「また来よう」と思えるような安心感・信頼感を提供することが一番の近道。スケジュールを押しつけるのではなく、「患者さんの生活の中に通院が自然と溶け込むような関わり」を意識することが、リピーターにつながる大切なコミュニケーションになります。
歯科衛生士としての提案
予防歯科で患者さんのモチベーションを高めるには、ちょっとした声かけや共感、そしてその人の努力を見逃さず伝えることが何より大切です。専門知識や技術以上に、“この人にまた会いたい”と思ってもらえる関わり方こそが、通い続けてもらえる一番のカギなのだと、私は日々の現場で感じてきました。
正直、私自身も患者さんとのコミュニケーションに悩んだ時期がありました。どう伝えたら響くのか、どうしたらまた来たいと思ってもらえるのか…。でもある時、「自分が楽しんで接すると、患者さんも楽しんでくれる」そんな実感が持てるようになってから、自然と会話もスムーズになり、次回予約も無理なくつながるようになったんです。
私たち歯科衛生士が伝える一言が、患者さんの未来を守るきっかけになるかもしれない。そんな思いで、今日からまたユニットに立てたら、それだけで十分素敵なことだと思います。
あなたの声かけが、誰かの「また来たい」に変わる。明日からの診療が、ちょっと楽しみになりますように。予防歯科の価値を、もっとたくさんの人に届けていきましょうね!
患者さんとの信頼関係を築く声掛けのコツと実践テクニックについての記事も、合わせてお読みくださいね。参考になったら幸いです。
