「歯科衛生士の資格と臨床経験に新しいスキルをプラスして、もっと違う働き方ができないかな?」
そんな歯科衛生士の新しいキャリアのひとつとして、注目されているのがリップアートです。
2023年から、歯科衛生士も、一定の条件のもとでリップアートに携わることができるようになりました。
もはや歯科衛生士の仕事は「歯科医院で歯石を取ること」だけではありません。これまで培ってきた歯科の知識や経験と、美容分野のスキルを掛け合わせた働き方が広がっています。
リップアートができると知って興味はあるけれど…
- 「歯科衛生士がリップアートをするのは本当に違法じゃないの?」
- 「スクールに通って資格を取ることが必要?」
- 「何から始めればいい?」
- 「どこで施術できるの?」
そんな疑問を持っている歯科衛生士さんのために、「歯科衛生生×リップアート」についてまとめました。
- リップアートができる歯科衛生士としての強み
- 必要な資格やスキル
- 実際にリップアートを始める方法
歯科衛生士として新しいキャリアをつくりたい方は、ぜひ参考にしてください。
リップアート×歯科衛生士|3つの強み
リップアートとは、専用の針を使用して唇に色素を入れ、色味や輪郭を整える医療アートメイクのひとつです。
歯科衛生士がリップアートの技術を身につけることは、単にできる施術がひとつ増えるだけ…ではありません。
「歯科衛生士が歯科医院で施術すること」ならではの強みがあるんです。
口元全体をトータルプロデュースできる
アートメイクというと、看護師が施術するイメージを持っている方も多いかもしれません。その中で歯科衛生士だからこそ持てる強みが、唇だけではなく歯や歯肉、歯並びまで含めた「口元全体」を見られる視点です。
歯科衛生士は、日頃から患者さんの口腔内や口元を見ている「口元の専門職」。日々の臨床で、歯の色や形、歯肉の状態、歯並びなど一人ひとり異なる口元を見ながら、その人に合ったケアや提案をしてきた経験があります。
その経験は、そのままリップアートの土台になります。
同じリップの色でも、歯の色や肌の色、口元の印象によって見え方は変わります。「唇をこの色にする」という視点だけではなく、歯の色や歯肉、笑ったときの見え方まで含めて、「この患者さんの口元をよりきれいに見せるには?」という視点でバランスを考えられるのは、歯科衛生士ならではの強みです。
つまり歯科衛生士にとって、リップアートはまったく新しい分野というわけではなく、これまで患者さんの口元を見て、考え、提案してきた経験そのものが、「リップアートができる歯科衛生士」としての強みになるんです。
ホワイトニングなどの美容メニューと組み合わせられる
リップアートは、歯科医院の新しい自費メニューとして導入しやすいことも強みです。なぜなら、歯科医院ですでにやっているホワイトニングや矯正、審美歯科など、「口元をきれいにしたい」というニーズとの相性がよいからです。
ホワイトニングの患者さんのなかには、歯が白くなったことで「次は唇のくすみが気になる」「もっと口元全体の印象を明るくしたい」と、美容への関心が広がる方もいます。
つまり、ホワイトニングや矯正の患者さんの中に、すでにリップアートのニーズが隠れている可能性がある、ということです。
まったく新しい患者層を開拓するのではなく、すでに口元の美容に関心がある患者さんへ、新たな選択肢として提案できる。これは、歯科医院でリップアートを扱うことの強みと言えます。
歯科衛生士自身のスキルを増やすだけでなく、既存の自費診療と組み合わせながら、医院が提供できるサービスの幅を広げるきっかけにもなるんです。
「リップアートができる歯科衛生士」というキャリアをつくれる
リップアートスキルを身につけることは、歯科衛生士として自分ならではのキャリアをつくる土台にもなります。
今まで歯科衛生士として歯科医院に勤務し、予防処置や診療補助、保健指導などをやってきた経験に、リップアートという新しいスキルを掛け合わせることで、活躍できる分野そのものを広げることができます。
できることが増えれば、転職先を選ぶ際の強みになったり、新しい仕事につながったりする可能性もあります。
そして、リップアートの実績を重ね、リップアートができる歯科衛生士という専門性を持つことができれば、勤務先でリップアートを担当するだけでなく、「この人にお願いしたい」と患者さんから選ばれる歯科衛生士を目指すことも可能です。
自分自身に顧客がつくようになれば、収入アップも期待できるでしょう。
「歯科衛生士+リップアート」という専門性を持つことは、勤務先だけに左右されない、自分自身のキャリアを確立していくためのひとつの選択肢になるんです。
リップアートは、針を使って唇に色素を入れるアートメイクのひとつです。厚生労働省はアートメイクを「医行為」と位置づけており、美容サロンなどで誰でも自由に施術できるものではありません。
2023年に厚生労働省から出された通達によると、歯科衛生士法第2条の「歯科衛生士は歯科医師の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置を行うことができる」という規定にもとづき、歯科医師の指導下であればリップアートを行うことができるとされています。
つまり、
- 歯科衛生士がリップアートを施術することは違法ではない!
- ただし、歯科医院で、歯科医師の指導のもとで行う必要がある!
- 個人サロンで行うことは禁止
これが結論です。
リップアートはどうやって始めればいいの?
リップアートは、歯科衛生士の資格を取得すれば自然と身につく技術ではありませんよね。必要な知識や技術を学び、施術できる環境を整えたうえで、少しずつ経験を積んでいく必要があります。
- リップアートについて情報収集する
- リップアートに必要な知識・技術を学ぶ
- リップアートができる環境を作る
- 症例・経験を積み重ねる
「リップアートができる歯科衛生士」としてキャリアにつなげていくのであれば、技術を習得して終わりではなく、症例や実績を積み、自分自身を選んでもらえるようになることも大切です。
【STEP1】リップアートについて情報収集する
リップアートに興味を持ったら、まずは情報収集から。ここ数年でネット上にもさまざまな情報が出ていますので、正しい情報を集めましょう。
- 歯科衛生士がリップアートを行う際の法的な位置づけや条件
- リップアートに必要な知識・技術
- スクールや研修で学べる内容・費用・期間
- リップアートの施術内容や施術の流れ
- リスクや副作用、施術できないケース
- 実際にリップアートを行っている歯科衛生士の働き方例
- リップアートを導入している歯科医院や求人
- リップアートを仕事にした場合の収入の目安
ブログ記事やSNSなどが主な情報源になりますが、残念ながらネット上には正しくない情報も多数出回っています。厚生労働省の通知や、スクールの運営元など、できる限り一次情報を確認することを意識しましょう。
リップアートの知識や技術を学べるスクールも流派があるので、通える範囲にどんなスクールがあるのか、卒業生の口コミなども含めてチェックしましょう。
実際にリップアートを行っている歯科衛生士の働き方を調べてみるのもおすすめです。勤務している歯科医院にリップアートを導入した人もいれば、リップアートを扱う歯科医院で経験を積んでいる人もいますし、フリーランスで活躍している人もいます。
「技術を身につけたあと、自分はどのような形でリップアートを仕事にしたいのか」までイメージしておくと、次に必要な行動を選びやすくなりますよ。
【STEP2】リップアートに必要な知識・技術を学ぶ
リップアートを仕事にしたいのであれば、専門のスクールで学ぶことをおすすめします。
実は歯科衛生士がリップアートをするのに、スクールを卒業して資格を取得することは、法律上の必須条件ではありません。スクールが発行する認定資格やディプロマも民間のものであり、それを取得すればリップアートの施術ができる、という法的な資格ではないんです。あくまで法的に必要なのは、「歯科衛生士」の資格のみです。
ですが、リップアートは針を使って色素を入れる医療行為。医療者として患者さんに施術する以上、リップアートに特化した技術を身につけることは、実務上、必須です。
色彩やデザイン、色素や専用機器に関する知識、口唇周囲の解剖、感染対策、リスク管理、カウンセリング…など、リップアートで求められる知識やスキルは、歯科衛生士学校では学ぶ機会がない部分も多いです。
リップアートでは、専用機器の操作や針の動かし方、色素の入れ方など、実際に手を動かさなければ身につかない技術も多くあります。歯科衛生士は日頃から細かな器具を扱ってはいますが、リップアートは普段の臨床とはまた異なる技術なんです。
だからこそ、患者さんに施術する以上、リップアートのスクールなどを通じて、正しい知識や技術を身につけてから実践することが必要になります。
スクールや研修で、指導者から直接フィードバックを受けることで、自分では気づきにくい癖や改善点を確認しながら技術を磨けますので、スクールを選ぶ際のチェックポイントにしてください。
「資格を取ればリップアートができる」と考えるのではなく、歯科衛生士として患者さんに安全な施術を提供するために、必要な知識と技術を身につけるという考え方をしましょう。
【STEP3】リップアートができる環境作り
スクールでひと通り技術を学んだからといって、自動的にリップアーティストとしてデビューできるわけではありません。施術をするには、施術できる場所や環境が必要です。
「歯科医師の指導のもと」という前提がありますので、施術ができる歯科医院を確保する必要があります。
歯科衛生士がリップアートを始める方法は、大きく分けて3つ。
- 現在の勤務先で導入を提案する
- リップアートを扱っている歯科医院で働く
- スポットや業務委託で施術を担当
必ずしも今の職場を辞めて転職する必要はありません。このような方法で、リップアートが施術できる場所を見つけていきましょう!
①勤務先でリップアートの導入を提案
現在、歯科医院に勤務しているのであれば、まずは院長に相談してみましょう!もし職場で導入してもらえれば、今の働き方を続けながら新しいスキルを活かすことができます。
ここで「リップアートを勉強したので、うちの歯科医院でもやりたいです!」と自分の希望だけを伝えても、よほどの信頼関係がない限り、なかなか受け入れてはもらえないもの。
新しい自費診療を始めるには、歯科医院側にも費用や準備が必要になります。しっかり下調べをして、整理してから提案しましょう。
- 必要な設備
- 導入費用
- 施術スペース
- 予約枠
- 歯科医師との連携
- 麻酔の対応
- 患者さんのニーズ
- 導入するメリット
「医院にとってどのようなメリットがあるのか」まで考えて提案すると、説得力が増します!
すでにホワイトニングなどに力を入れている医院であれば、既存の患者さんへの新しい選択肢として提案しやすいです。現在まったく美容分野に力を入れていない医院だとハードルは高いかもしれませんが、医院にとってのメリットをしっかり伝えることで、リップアートをきっかけに新しく自費診療を始めるというケースもあります。諦めずにいきましょう!
設備や費用などハード面をまとめた上で、普段の診療や患者さんとの会話から、「唇の色やくすみを気にしている方はいないか」「口元の美容に興味を持つ患者さんがどのくらいいるか」など、医院の患者層やニーズを考えていきましょう。
ここまであらかじめ整理しておくと、院長も導入後をイメージしやすくなります。
「自分がリップアートをやりたい」ではなく、「この医院でリップアートを取り入れたら、患者さんや医院にどのような価値を提供できるか」という視点で提案することが、導入への第一歩です!
②リップアートを導入している歯科医院で働く
すでに環境が整っている医院に転職するのも1つの方法です。リップアートを自分の強みにしていきたい、今後は美容分野にも力を入れていきたいと考えている方であれば、キャリアそのものを変える選択肢になります。
「今の職場は辞めたくない」「いきなり転職するのは不安」という方は、現在の歯科医院での勤務を続けながら、休診日を利用して別の歯科医院でリップアートを行う、という方法もあります。
この場合は、現在勤めている歯科医院の院長と、リップアートで勤務する歯科医院の院長、双方の理解が必要です。そもそも副業はOKかなど、しっかり確認しておきましょう。
最初から働き方を大きく変えるのは不安ですよね。週5日すべてをリップアートの仕事にせずとも、まずは月に数日から経験を積み、本業と両立しながら少しずつリップアートの仕事を増やしていく、ということもできます。自分に合った方法で、少しずつ進んでいきましょう。
③スポットや業務委託で施術を担当
特定の歯科医院での常勤でなく、スポットや業務委託でリップアートのみの施術を担当するという選択肢があります。
医院からすると、リップアートを導入しても本当に患者さんが来るのか?という懸念があり、リップアートのためだけに歯科衛生士を常勤で雇用することはなかなか難しいです。
でも、リップアートができる歯科衛生士と個別で契約をして、リップアートの予約が入った日にだけ出勤して施術してもらうというやり方だと、医院側のリスクがとても少ないんです。道具は歯科衛生士が持参するので、歯科医院からすると予約が入った時にユニットを貸すだけで、最小限のリスクでリップアートを導入できる、という見方もできます。
この方法は歯科衛生士側にもメリットがあります。1つの歯科医院で「予約をとるのはこの日だけ」と枠を決めておくことで、出勤日を減らし、少ない負担で効率よく稼ぐことができます。
複数の歯科医院で施術を担当できれば、仕事量を増やすこともできます。たとえば「月曜日はA歯科医院、木曜日はB歯科医院」のように、複数の医院と契約して予約をとるイメージです。
大切なのは、「今の医院ではできないから」と諦めるのではなく、自分が目指すキャリアに合わせて施術できる環境をつくっていくことです。まずは勤務先に相談してみる、リップアートを導入している医院を探してみるなど、今できることから一歩踏み出してみましょう!
【STEP4】症例を増やし、実績を積む
環境が整ったら、症例を増やして実績を積んでいきましょう。
最初のうちは、友人知人や職場のスタッフにモニターをお願いするのもひとつの方法。言いやすい関係性であれば、仕上がりについても率直な意見をもらいやすいですよね。
患者さんによって、唇の色や形、左右差、希望する仕上がりはさまざまです。「自然な血色感がほしい」「くすみを目立ちにくくしたい」など、リップアートを受ける目的も異なります。学んだ技術をそのまま当てはめるのではなく、一人ひとりの口元や希望に合わせて調整する力が求められるところです。
症例を重ねるほど、色やデザインの選択、施術技術はもちろん、カウンセリングや、仕上がりをイメージしてもらうための説明力なども磨かれていきます。施術後の経過まで確認し、「どのように発色したのか」「希望通りの仕上がりになったのか」を振り返ることも大切です。
こうして実績を積んでいくと、「リップアートができる歯科衛生士」として自分自身を選んでもらえる状態になっていきます。
歯科衛生士は、勤務する歯科医院が変われば、患者さんとの関係も一から築き直すことが少なくありませんが、リップアートという専門性を持ち、自分自身に価値を感じてもらえるようになれば、勤務先が変わっても「この人に施術してもらいたい」と思ってもらえるようになっていきます。
自分に顧客がつくようになれば、将来的にはリップアートを中心に仕事を組み立てていくことも十分可能になってくるでしょう。
症例写真や、施術へのこだわり、リップアートに関する知識などをSNSで発信することも、自分を知ってもらう方法のひとつです。発信を続けることで、患者さんから指名されるきっかけにもなります。
まとめ|歯科衛生士×リップアートでキャリアの可能性を広げよう
「どこの歯科医院で働いているか」ではなく、「あなたにリップアートをお願いしたい」と選んでもらえることは、自分自身のキャリアを確立することにもつながります。
リップアートを新しい技術のひとつで終わらせず、自分の強みとして育てていくことで、歯科衛生士としての働き方やキャリアの可能性はさらに広がります。
歯科衛生士の役割は、予防や診療補助だけではありません。「口元の美容」をサポートすることも、これからの歯科衛生士が活躍できる分野になっていきます!
時代の変化に合わせて私たち自身もアップデートしながら、歯科衛生士が活躍できる場所や役割をもっと広げていきましょう!





